「将来のために勉強しなさい」では子供は動かない 地域や社会とのつながりが子供の学びを変える

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笑顔の女子学生
本当の意味での子供にとってのウェルビーイングとは何なのでしょうか(写真:Fast&Slow/PIXTA)
ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授のリンダ・グラットン氏らが著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』で提唱した「100年時代の人生戦略」は、日本でも一大ムーブメントを起こし、高校生向けに『16歳からのライフ・シフト』も刊行された。
長い人生の中で学び続けることが大事な時代に、学校現場はどうあるべきなのか。「ウェルビーイング」を重視した学校作りを実践してきた埼玉県上尾市立平方北小学校校長の中島晴美氏と、全国各地で学校、教育委員会向けの研修・講演、コンサルティングなどを手がけている妹尾昌俊氏に、人生100年時代を迎え、これからの学校教育に必要なことを聞いた対談をお届けする(前編はこちら)。

子供にとってのウェルビーイングとは?

妹尾:何が本当に子供にとってのウェルビーイングなのかを考えたとき、参考になるのが熊本市の遠藤洋路教育長の視点です。遠藤教育長は、将来のためと言って、子供に「今」を我慢させることに疑問を呈しています。

16歳からのライフ・シフト
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以下は私の解釈になりますが、たとえば数学はすごく得意だけど英語が苦手だという子供に、「入試に出るから」と数学より英語を勉強させようとする。学校でも家庭でも、得意を伸ばすより苦手を克服させることに重きを置きがちです。もちろん子供の将来を思ってのことなのですし、私も親として気持ちはよくわかるのですが、子供たちの「今」のウェルビーイングを軽視するのも疑問です。その子は数学に熱中していくなかで、英語で書かれた情報を読む必要性が出てきて、英語の勉強もしたくなるかもしれない。

中島:確かに、本校も子供たちが幸せでいてほしいという思いでウェルビーイングの考えを取り入れていますが、現在の幸せを大切にすることと、将来の幸せにつながる部分を支援することの2つの側面がありますね。

妹尾:現在の幸せを考えた場合、家庭で問題を抱えているケースもありますから、学校だけでなく、自治体や地域団体の福祉関係者とも連携する必要があります。遠藤教育長は、「現在の幸せに関わる福祉の専門家をもっと学校に入れるべきだ」と提唱されていて、その通りだと思いました。今の学校では、将来のための学習指導や進路指導が強くなりがちです。

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