ジャニーズ「焦りの報酬放棄」次に予想される事態 「タレントに罪はない」に本人たちも問われる判断

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最後に「広告業界やテレビ業界でどんな声が挙がり、何が恐れられているのか」にもふれておきましょう。

私がそれぞれの関係者数人に取材したところによると、まず広告業界で恐れられているのは、「『あのポスター』『このCM』などと拡散されて取り返しがつかなくなる」「前科のように悪いイメージが長期にわたって残る」こと

広告・テレビ業界が最も恐れること

また、世界的にビジネスをしている企業は「ジャニーズという社名自体がすでにNG」であり、国内向けの企業も「熱狂的な一部のファンより、マジョリティとなる一般層の批判を恐れている」と聞きました。性加害は重大な犯罪であるだけに、自社の企業イメージを損なわないためには、目先の経済的な損失を恐れず、中・長期的視野に基づいた対応が必要なのでしょう。

次にテレビ業界が最も恐れているのは、「性加害に沈黙して報じなかったこと」や「忖度を続けたこと」の検証や会見を求める声の高まり。ここまで民放各局は沈黙に関する反省のコメントを公表したほか、報道・情報番組でも「今後の関係性が問われています」「ジャニーズ事務所に人権尊重を求め、注視していきます」などと語るのみで検証や会見は避けています。

さらに、「沈黙」や「忖度」への追及が他の大手芸能事務所にも及び、こちらへの検証や会見を求められることを避けたいのではないでしょうか。もちろん番組や出演者の入れ替えなどは避けたいところですが、それ以上に恐れているのは、今回の件が局を揺るがす責任問題に発展することなのでしょう。

アサヒホールディングスの勝木敦志社長が朝日新聞の取材で、「人権を損なってまで必要な売り上げは1円たりともありません」と語っていました。その通りではあるものの、広告業界とテレビ業界にとっては、イチ取引先というにはジャニーズの存在はあまりにも大きく、ビジネスとしての高度な判断力が問われているのは間違いなさそうです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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