ジャニーズ「焦りの報酬放棄」次に予想される事態 「タレントに罪はない」に本人たちも問われる判断

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再発防止策も、CCO(チーフコンプライアンスオフィサー)の設置以外、具体的なものは、ほとんどなし。「同族経営の弊害を排する体制を構築する」と書きながら、社名と株主の問題にはふれず、しかも東山社長のハラスメント疑惑が解消されていないだけに、説得力に欠ける感は否めません。

さらに最も物議を醸しているのが、「今後1年間、広告出演並びに番組出演等で頂く出演料は全てタレント本人に支払い、芸能プロダクションとしての報酬は頂きません」という終盤の文章。そもそもジャニーズ事務所は、ファンクラブ会費とリリースやライブなどの売り上げが大きいビジネスモデル。「ここ数日の流れで失う可能性が高くなった広告や番組出演に固執するより、それを自ら手放すことで印象の悪化を防ぐ」というダメージコントロールの観点が見て取れるのです。

半年間変わらなかった「具体性のなさ」

また、ジャニーズが企業との取引で得られるものは金銭だけではなく、もしそれを放棄したとしても、商品のブランド力や実績は積み重ねられていきます。社名の続行や内部からの社長就任などが批判を招いた会見の時と同じように、今回の文章からも「できるだけ現状維持でいきたい」という思惑がにじみ出ていました。

ただ、現在は多くの情報にふれて賢くなった世間の人々が、そんな企業の思惑に気づいてしまう時代。「自社へのダメージが最小になるようを対応を小出しにしながら」「世間の反応を見ながら」では事態を好転させることは難しいのではないでしょうか。

9月7日の記者会見後、企業のスポンサー離脱が続く(撮影:風間仁一郎)

それ以外でも、「補償受付窓口のURLについては、後日公表させていただきます」「9月中には、人権に関するポリシーの制定など再発防止特別チームが提言した内容に基づいたさらに具体的な再発防止策を公表させて頂く予定」などの文章が、「いかにダメージを抑えるための緊急対応であるか」を物語っていました。7日の会見後に企業やテレビ局などとの関係が危うくなり、危機感を募らせたうえでの暫定的な発表である様子が伝わってきます。

BBCが「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」を放送した3月から約半年。藤島ジュリー景子前社長は5月の動画で、「対応が遅くなった点に関しまして、お詫びいたします」と謝罪しながらも、性加害を「知りませんでした」と語り、具体的な被害救済にもふれませんでした。

その後、8月4日に国連人権理事会、同29日に再発防止特別チームの会見を経て、9月7日にようやくジャニーズ事務所も会見を開き、同13日に被害補償と再発防止策を発表。しかし、この間、具体性に欠ける内容は一貫して変えられず、スピード感の遅さが批判を招く一因になってしまいました。

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