元宝塚「おじさん役」天真みちるの退団後の“今" 宝塚の枠を超えて「やりたい」を追求したかった

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というのも、私は「やってみたいな」って思った瞬間に、感覚で飛び込む系の気質。

「やってみていいですか?」と確認をして、回答を待つ時間に耐えられないんです。というか、気になった瞬間にやらないと好奇心が続かない。

そういうタイプだから、フリーランスの方が自分には合ってるのかもしれない。

そう思って実際に独立したら、いよいよ何でもしていいんですよね。

どこに進んでいったらいいんだろうって、最初はもう、すっごいパニックでした。

辞めるきっかけ「ぶっちゃけ自分はここまでやりたい」

ただ、今思えば劇団にいた頃から、宝塚の枠を超えて自分のやりたいことを追求したい思いはあったんです。

私は宝塚でみんながトップを目指す中、「おじさん役」に活路を見い出した人間です。それも、面白いおじさん。

(撮影/赤松洋太)

演出家の先生によっては演じ方を任せてもらえることがあるんですけど、「こう演じてみたい」を取り入れていったら、「タカラジェンヌとして、それはどうなの?」と歯止めをかけられることがあって。

宝塚は「清く正しく美しく」が基本です。そこに自分のオリジナルを入れようと思う人は少ないというか、憧れて入った劇団の一員として、胸を張ってタカラジェンヌを名乗り、そう認められることに重きを置く人が多い。

そういう周りの人たちから、私はちょっと外れていたんですよね。

役を頂いて、好きにやれる部分があったとしても、そもそも所属しているのは宝塚。

そこを忘れて、自分視点で自由に考えすぎちゃうことがありました。

結果、一時期は「自分がやることによっていちいち周りを怒らせてしまう」みたいな状態になってしまった(笑)

今は笑って話してますけど、これは私にとって一番ショックな状態です。

純粋に「面白い」を突き詰めた結果、人の不快を買ってしまっているわけなので……。

たとえお客さんから拍手を頂いたとしても、袖にはけたら一緒に舞台をつくっている皆さんが仁王立ちして待っている。

それを見て、「これはダメだったのか!」って気付くという……。

そこの感覚がちょっとズレているのは当時から感じていました。

だからといって、周囲に合わせて続けていく道を想像した時に、自分の中で何か失われていく感覚や感情のようなものがある気もしていて。

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