元宝塚「おじさん役」天真みちるの退団後の“今" 宝塚の枠を超えて「やりたい」を追求したかった

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そこで目をつけたのが、おじさん役者です。

通常は20〜30年のキャリアを積んだ上級生が担うポジションだったので、そこを3年目ぐらいで取ったら面白いんじゃないかっていう。

急がば回れというか、ない道を掘って進んだというか、「ここに穴を開けたらあそこ行けそうだぞ!」みたいな感じで。途中から逆ハイというか、「もういっか! 一人ぐらい違っても!」っていう(笑)

(撮影/赤松洋太) 

だから、組織に認められている人間ではないっていう自覚がずっとあったんです。

でも、こういう自分の過去を知った人からは、「トップではないポジションをつくった」と言ってもらえて。それを周りの方に「面白い」とも言ってもらえました。

自分の道は特殊であり、それを売り出すために必要な自己紹介の一つが「元宝塚」。

それなら、そのことを念頭に置きながら進んでいった方が楽しそうだなと思うようになりました。

「退団後の自分、何を人間一人でやっていこうとしてたんだよ」って今は思います。あの頃の自分、ロックでしたね(笑)

つまずいた時こそ、自分らしさを知るきっかけになる

私の場合、「これはできないな」と思うことが、結果的に自分らしさにつながっていったことに最近気付きました。

つまずいた時こそ、自分らしさを知るきっかけになるというか。

「私は絶対にトップにはなれない」と思ったことがまさにそう。トップになるための努力が足りないことは分かっていたけど、私にはその努力がどうしてもできなかったんです。

みんなが当たり前のように進んでいく道は、私にとっては自分を押し殺さないと行けない道だった。

それでも宝塚には残りたかったから、じゃあどうする? って考えた結果、面白いと思ってもらえたら残れるんじゃないかって。

だから、おじさん役は最初、苦肉の策だったんです。

それなのに、角刈りにしてみよう、もみあげをつけてみよう、おじさんらしい靴を買いに行こう……っていう、その時々のおじさん役を掘り下げる努力は無限にできて。

格好つける役はできなかったけど、おじさん役に関しては「多分これ、私にしかできないな」と思えた。

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