無印「ユニクロ出身社長」地方大量出店の成算 規模拡大へ舵切るも「2期連続減益」で正念場

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しかし効果はまだ出てきていない。出店に注力中の600坪型店舗(郊外店の標準サイズ)は、1坪当たり月商が10万円にとどまる。都市部より家賃が安いため収益性は確保できているものの、「目指すところは1坪当たり月商15万円。その水準に引き上げていくため、商品の中身を変えていく必要がある」と堂前社長は1月の決算説明会で語っている。

群馬県前橋市朝日町は食品スーパーに隣接。国内で郊外店の出店を進めている(記者撮影)

4月13日に発表した良品計画の2023年8月期第2四半期累計決算は、売上高が前年同期比15.9%増の2833億円だった一方、営業利益は同46%減の101億円へ大幅に落ち込んだ。急激な円安と原材料価格の高騰が最大の要因で、国内事業を中心に苦戦が続く。

今年1月と2月には春夏商品の約2割で値上げを行ったが、今2023年8月期の業績予想は2期連続の営業減益へ下方修正を余儀なくされた。その後も販売動向は振るわず、国内既存店売上高は4月が前期比85.8%、5月が同84.1%の低空飛行が続く。

問われる堂前体制の評価

無印はどこへ向かうのか。JPモルガン証券の村田大郎シニアアナリストは「無印の強みは国内での圧倒的な知名度。地球環境に配慮したモノ作り、包装の簡素化など無駄を徹底的に減らすコンセプトはとてもユニークで、独自のポジションを築いている」と評価する。最近は価格戦略による浮き沈みが激しいが、中核となる世界観の強みは失われていない。

今のペースで店舗数を増やし続ければ、スケールメリットを生かした商品力の強化につながる。しかし無印に限らず、大量出店と既存店活性化の両立は容易ではない。堂前体制に移行してからの中計は来2024年8月期で一区切りを迎える。2030年の売上高3兆円目標に向けてひた走るのか、それとも方針転換が行われるのか。難しい判断が迫られそうだ。

山﨑 理子 東洋経済 記者

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やまざき りこ / Riko Yamazaki

埼玉県出身。大学では中国語を専攻、在学中に国立台湾師範大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在小売り・アパレルを担当。趣味はテレビドラマのロケ地巡りなど。

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