無印「ユニクロ出身社長」地方大量出店の成算 規模拡大へ舵切るも「2期連続減益」で正念場

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地方・郊外の開拓に向けて、堂前社長が就任時に立ち上げた肝煎り事業がある。2021年9月に発足した「地域事業部」は、横浜・近畿・北海道など12(区分変更し現在は10)のエリアから立ち上がった。

各事業部長を決めるにあたっては、その地域に対して熱意を持つ有志を募るなど独自の手法が採られた。良品計画の中村和義氏は「最初に発足した事業部の中では群馬の店舗数が最も少なく、出店余地が大きい」と見込み、群馬事業部長に立候補して起用された。

前橋中央通り商店街の地元名産品コーナー。スタッフや市の観光課などへヒアリングを行い情報収集した。「無印の存在を地域住民に広めていきたい」と下田香絵店長(記者撮影)

業務内容は「出店開発、商売、土着化、新サービスなど地域の取り組み全体に責任を負う」と多岐にわたる。地域事業部の発足当時、群馬・埼玉のブロックマネージャーを兼務していた中村氏は、後任育成の傍らで群馬県内の出店交渉のほうに業務の軸足を移していったという。

そして今年2月、重要な意味を持つ店舗のオープンにこぎ着けた。JR前橋駅から徒歩15分の商店街内に開業した「無印良品 前橋中央通り商店街」で、無印流「商店街活性化」拠点となる店舗だ。

地方出店は儲かるのか

実際に店舗を訪れると、35坪ほどの売り場はコンパクトな印象だ。正規出店に先んじて行った出張販売で集めた地元住民の要望から、キッチン雑貨やバウムクーヘン等の菓子類など厳選した1600アイテムが販売されている。

特徴的なのが、レジ横に置かれた「一坪開業」の看板。前橋の生産者や事業者らを対象に、1日4000円の賃料(暫定、地域や店舗によって異なる)で店内スペースを提供するという商店街活性化の取り組みの一つだ。5月末時点で3事業者が利用していた。

一坪開業は前橋に限らず、岡山県岡山市にある商店街立地の店舗でも展開している。「まずは無印の店舗内で試し、最終的に商店街に出店してもらえれば。無印としても商店街に貢献していきたい」と、地域活性化などの新規事業を担当するソーシャルグッド事業部の工藤浩樹氏は意気込む。

店舗では地元名産品の販売や「つながる市」と呼ばれる出店イベントを定期的に行う。こうした地域活性化の取り組みを地方や郊外の店舗で精力的に行うことで、国内の成長基盤を盤石にしたい狙いだ。今2023年8月期は国内で純増76(前期は純増37)と倍増計画となっている。

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