2023年6月上旬に日本の某サウナ施設で、サウナ浴とともに水深の深い池での冷水浴を楽しんでいた客が溺死するという、痛ましい死亡事故がついに起こってしまった。
死因は究明中であるため、いわゆる水難事故だったのか、究極の温冷交代浴としてのサウナ浴が身体に異変を来した結果なのか、現時点ではまだわからない。
だが、この報を聞いて、「いつか、こういうことが起きてもおかしくなかった」と身につまされた人は、サウナ愛好家の中にも施設運営者の中にも、意外と少なくなかったのではないだろうか。
話題の新刊『「最新医学エビデンス」と「最高の入浴法」がいっきにわかる!究極の「サウナフルネス」世界最高の教科書』の日本語オリジナル版翻訳を手がけた、フィンランド在住のサウナ文化研究家・こばやし あやな氏が、日本人のサウナ浴の行き過ぎた「アトラクション化」に警鐘を鳴らすとともに、サウナ本場の国フィンランドでの先例(手本と反省点のどちらも)を示す。
「度を超えた温冷交代浴」はリスク増大!?
正直に言えば、筆者も昨今の日本でのサウナブームを嬉しく思いながらも、日本人が日に日に「体験のエクストリームさ」を求めすぎるあまり、健康効果よりもリスクのほうが高い入浴法となってしまっていないか、心配になる面もあった。
現代の日本人の典型的なサウナ浴法は、まず熱々のサウナ室内でじっと耐え、我慢の限界がきたところでキンキンに冷えた水風呂へと身を沈め、締めに外気浴で「ととのう」という、究極の温冷交代浴法だ。
「この温度差が極端なほど気持ちよくなれる……」と信じている人も少なくないようで、施設側もそのニーズに応え、より熱いサウナ室とより冷えた水風呂を提供しようと躍起になる傾向が依然としてあるようだ。
確かに、激しい温冷交代浴で得られる快感はより大きく魅惑的なのかもしれない。
だが、誰もが薄々気づいているように、それは薬物依存症者が快感に慣れてはより強い快感を求めてしまう現象と変わらないのだ。
実際のところ、医学的には「(適度な)温冷交代浴」が身体によいのか、リスクのほうが大きいのか……という検証すら、まだ十分になされていないという。
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