"死亡事故"が警鐘を鳴らす「日本のサウナ」の未来 「より熱くより冷たい」を追求する現状の違和感

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身体がいきなり冷却されると、一時的には呼吸や心拍数が上がって血圧も上昇する。

だが、その刺激的な環境下でも決してハイやパニックにならず、心身を落ち着けて水中にとどまることができれば、呼吸や心拍さえも落ち着きはじめるものなのだ。

そもそもフィンランドの湖は、水際でも水深2メートル以上の場所も珍しくないため、学校の水泳の授業では、早くから足のつかない水深のプールでの訓練を受ける。その特殊環境に慣れるうち、過度にはしゃぐことの危険性も自然と身につく。

また、泳ぎや冷水浴が苦手な人は、決して無理はしない。フィンランド・サウナから湖へと続く桟橋には、必ずはしごや階段が固定されており、すぐにそれを握れる距離で軽く入水する限りは、溺れることもない。

フィランドでは、湖へと続く桟橋には、はしごや階段が固定されている(写真提供:こばやし あやなさん)

自信がない人や子どもは、単独で入水しないことを徹底することで、万が一の事故を防ぐべきだと教えられる。

水辺の公衆サウナでも、監視員が常駐しているとは限らないので、いざというときの共助の精神や、そのための心身の余裕が不可欠なのだ。

「身体や自然を過信しない」ための判断力

じつは、普段はさほどサウナでハメを外すこともないフィンランド人でも、明らかに気が緩んだせいで重大な事故を招くタイミングが存在する。特に悪名高いのが、6月下旬の「夏至前夜祭」の夜だ。

最も日照時間が長くなるこの日は、長く暗い冬を越さねばならない北欧フィンランドに暮らす人々にとって、一年のハイライトとも言うべき一夜だ。

ところが、つい浮かれて普段以上に飲んだ状態でサウナと湖を往復したり、船で湖上に繰り出したりして、全国的に水難事故の件数が跳ね上がる一夜でもあるのだ。

警察情報では、この日を筆頭に、年間で100〜150人のフィンランド人が水難事故(おもにモーターボートからの転落)で溺死しているそうだ。ちょっとした気の緩みが重大な事故につながるのは、サウナでも同じだろう。

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