東大総長賞の4人はなぜ「突き抜けた」か?

昨年度の受賞者の素顔

東大は、すぐれた功績を上げた個人や団体に総長賞を授与している。昨年度の受賞者たちは何が違うのか、その秘密に東大改革のカギがある。

 

貧乏旅行で愛用したリュックを背負い、三四郎池のほとりに立つ青木さん。好奇心のおもむくまま動けるように荷物は最少限(撮影/写真部・植田真紗美)

■青木翔平さん(28)――大学院工学系研究科博士課程修了

「異文化と衝突 途上国支援の道が見えた」

工房の作業台に残された削りかけの機械部品。

青木翔平さんは、思わず苦笑いした。男子生徒に「この部品、削っといて」と言い残してその場を離れ戻ってみたら、生徒は家に帰った後だった。

3月に博士課程を修了した青木さんは、西アフリカ・ガーナの工業高校で技術を教えていた。貧困問題が根深く残るガーナの課題は、雇用を生み外貨を稼ぎだす製造業の育成。青木さんはこの地で起業家や技術者を育てるビジネスをゼロから立ち上げようとしている。

「今日までに」と言ったことが明日、あさってになるのはざら。しばしば起こる停電の間は扇風機も止まり、汗だくで作業する。日本の常識は通用せず、何事も予定通りには進まない。

時間効率をとことん追求し、日本の受験戦争を勝ち上がった優等生が集まる東大の中にずっといたら、とても理解できない世界かもしれない。しかし、青木さんは「こんなもの」とさらりとかわす。

アジアを中心に40カ国

東大に入ったのは、航空宇宙工学を学べるからだった。幼い時からの夢は宇宙飛行士。鳥取県立米子東高校から理科一類に現役合格した。何の障害もなく夢に邁進するかに見えた青木さんを変えたのは、ある男性の言葉だった。

2年生の春休み、中国へ貧乏旅行に出掛けた友人の話に触発され、リュックひとつでアジア4カ国を回ったときのこと。タイ北部の山間の村で、20代の男性宅に泊めてもらった。将来の夢を問われ、「宇宙飛行士になって宇宙開発の仕事をしたい」と答えたら、「何それ? どっちも知らない」と言われた。

「衝撃でした。欧米の人に話すと『かっこいいね』と言ってくれるし、最先端の研究をして科学の発展に貢献できるという自負があったのですが、それが粉々に砕かれました」

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