広島の生存者たちが、いま心配していること <動画>「原爆の記憶」を次代に継承できるか

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広島の生存者は、ある者はそのあまりにも悲惨な体験から、またある者は自分や自分の子孫に対する差別をおそれ、しばしば、自分たちの子どもにさえ、自分たちの経験を語ることを自制してきた。

爆心地からわずか1.2キロ(0.8マイル)のところで爆発にあった85歳の加藤マキコさんは、そういった生存者の一人。彼女は、自分の子どもや孫に自分がどのような目にあったかをけっして語ることなく、人生を過ごしてきた。しかし、加藤さんは最近、考えを変えたという。

「だけど、言わなければいけないことだと、最近思い始めました。自分が高齢者になり、長く生きていられるわけではないからです」

米国の爆撃機は1945年8月6日、広島に原子力兵器を投下し、その年の終わりまでに市内に住む35万人のうち、約14万人を殺した。市には、まだ、平均年齢が80歳に近くなる6万人あまりの生存者がいる。

核兵器の脅威を訴えていくことが広島の使命

梶矢文昭さん(76歳)は、元教員で、子どもたちに爆撃の経験を教えるために、いくつもの絵を描いた。

梶矢さんは姉妹を原爆で亡くした。両親は、彼女たちを田舎に移して安全を確保していたが、爆撃のちょうど少し前に、家族と一緒に過ごしたいという彼女たちの願いを聞き入れ、市内に連れ戻していた。

残る家族はなんとか生き延びたが、傷の記憶と母親が毎年8月6日に仏壇の前で何時間も泣き続けている光景の記憶とに導かれて、梶矢さんは核兵器の廃絶を強く訴えるようになった。

「核兵器がいかに脅威であるか。人類にとって、いかにあってはならないものであるか、使ってはならないものであるか、ということは、やっぱり広島に学ぶべきです」

米国は、広島の三日後に、第二の原爆を長崎に投下した。日本は、8月15日に降伏した。

安倍晋三首相が戦後日本の平和憲法に定められた軍備に関する制限条項を緩和することを模索している中、今年も記念日を迎える。評論家は、それが国家を再びあやまてる戦争の道へと導くのでは、と恐れている。一方、安倍首相の支持者たちは、増大する東アジア地域における脅威を抑止するために変更は必要であると考えている。

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