再エネ制度見直しでも"最大限導入"は貫く 経産省の新エネルギー対策課長に聞く

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――日本も欧州諸国と同じように、再エネの「優先給電」を徹底すべきとの意見もある。

 日本でも優先給電はあるが、原子力のほうが再エネよりも優先されているのは事実。

ただ、もし再エネを原子力より優先させた場合、原発運転中に制御棒を上げ下げさせて、原発を不安定な状況に置けるかという問題が生じる。国民がそれでもいいというのならよいが、私の知る限り、原発を不安定な状況に置いてまで再エネを優先すべきとの意見が多いとはいえない。

――今後、再エネの買い取り価格をどう見直していくか。2015年6月で3年間の「優遇期間」(再エネ事業者の利潤配慮期間)も終わることになる。

買い取り価格は国会同意人事による調達価格算定委員会の議論を経て決まるものであり、その前にわれわれがとやかく言うべきではない。一方、経産省の新エネルギー小委員会でも価格について議論されており、リードタイム(事業準備期間)が短く導入が進んだ太陽光とその他の再エネとの条件の違いを考慮すべきであり、事業コストだけではなく、導入量を踏まえた価格設定にしないとバランスのとれた再エネの最大限導入は実現できないとの意見が多い。小委の山地憲治委員長は調達価格算定委員会の委員でもあり、そうしたことを踏まえて議論がなされると思う。

国内の買い取り価格は高めだが・・・

――太陽光の買い取り価格は2014年度で1キロワット時当たり32円(非住宅、税抜き)だが、導入量を踏まえれば当然、2015年度以降は厳しくなる。

ドイツやスペインが2010~2011年に太陽光導入に抑制をかけたが、今の日本の買い取り価格はその抑制前とほぼ同程度の水準だろう。決して極端に高すぎるわけではない。ただ、ドイツやスペインの太陽光の買い取り価格は現在、パリティ割れ(電気料金を下回る水準)になっており、日本の価格は国際的に見て確かに高い水準にある。

これまでの日本のマーケットは国内に閉じており、競争が十分に起きていなかったという要因はある。国産の太陽光パネルが比較的高いことや、架台や土地、さらに人件費を含めた建設造成費などサービスの費用の高いのは日本特有の事情だ。ただ、今後は競争が高まることで、コストダウンが加速する方向にはなるだろう。

一方、事業者によってコストの差が非常に大きい。利益率を見ても、平均6%を前提にしているが、事業者によって1%から12%ぐらいまでの開きがある。買い取り価格があまりに下がりすぎると、一部の大規模事業者だけが利益を上げ、市民ソーラー的な地域の取り組みにブレーキがかかってしまいかねない。われわれとしては、太陽光中心にコスト低減を進める一方で、地域の取り組みを進めるにはFITの外で何らかの支援の仕組みが必要ではないかと考えている。

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