再エネ制度見直しでも"最大限導入"は貫く 経産省の新エネルギー対策課長に聞く

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松山泰浩(まつやま・やすひろ)1969年生まれ。1992年、東京大学法学部卒業、経済産業省入省。ミシガン大学で経済学修士。資源エネルギー庁資源・燃料部石油・天然ガス課長、経済産業大臣秘書官などを経て、2014年9月から現職(撮影:梅谷秀司)

――問題は、出力制御による事業リスクの程度がどうなるか。電力会社の試算はいつ出るのか。

導入量が増えれば増えるほどリスクは高まるので、事業者にとって予測可能性を高める情報はできるだけ早く出す必要がある。現在、各社が準備作業をしていると思うが、2015年1月のできるだけ早いタイミングでと考えている。

いちばん出力制御がかかりやすいのは春や秋だ。ゴールデンウィークの真っ昼間のように、1年のうちで需要がいちばん少ない反面、太陽光の出力が最大になるような時に、太陽光の出力カット幅がどれくらい拡大するかが当面のポイント。もちろん、夏場の最大需要を上回るような再エネ導入量になれば、それ以上、受け入れることは難しくなる。

すでに投資をしてしまった人にとっては、無制限の接続制御というリスクは高まるが、事業開始の道自体は開かれる。他方、これから事業計画を見直す方々にとっては、新しい仕組みの下での事業判断が必要になってくる。その際には、出力制御がどれくらいの見込みになるのかなど、判断する指標をわれわれとしても準備したい。それを見て、参入するかどうかを判断してもらいたい。

一方、東京電力や関西電力、中部電力の管区内はまだ接続余地が十分あり、そこで事業をするのであれば、そうした問題は発生しない。これらの管区だけで全国発電量の6~7割を占める。今までは地価の安い一部地域で投資ラッシュが起きているが、今後は全国的に均一化される方向に行くのが望ましい。

長期的には出力制御は少なくなる

――大震災前30年間平均の原子力発電稼働率を前提に接続可能量を決めたことを問題視する意見も多い。

今後、原発が再稼働するかわからない中、ベースロード電源としての原発の比率を一定程度想定しておく必要があった。原発を織り込まずに接続可能量を決め、後になって原発が再稼働すれば、多くの再エネが押し出されてしまう。FITという制度は、将来20年間という長期にわたり固定価格での買い取りを保証している。しっかりビジネスと向き合った制度であるだけに、無責任なことはできない。

接続可能量は、将来の原発の稼働状況によって変わってくる。原発依存度が低下すれば、再エネの導入余地は増える。また、電力システム改革によって、今はほとんど活用されていない地域の連系線も活用されてくれば、全国規模で電力の相互融通が可能になる。つまり、長期的には再エネの出力制御が少なくなる方向へ行くだろう。

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