日本は移民労働者を積極的に受け入れよ アベノミクスは供給サイドの刺激策が不十分

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日本の巨額な政府債務や年金資産不足は大きな問題だ。10年物国債金利が0.5%を下回る現状では、このリスクは非現実的である。しかし、日本の債務問題は重要でないと言うのは、高いレバレッジをかけるヘッジファンドがまったく安全であると言うようなものだ。リスクは先のことかもしれないが、ささいなことではない。日銀が、インフレ率が持続的に平均2%になると国民に確信させた場合、どうなるかを考えてみればよい。そのときでも、10年物金利は0.5%にとどまっているだろうか?

その他の要素、たとえば新興国市場における成長の急速な落ち込みが、国際的な実質金利の急激な上昇や日本国債のリスクプレミアムの上昇を引き起こした場合、どうなるだろうか?

財政を安定させるためには、消費税率を上げることが最終的に必要であり、当然、日本は海外投資家が日本の意志の強さを疑い始めるまで待つべきではない。問題は、タイミングと戦術である。第2次の消費増税を延期したことは、アベノミクスを大気圏外に押しやることと長期的信用の維持との間のよい妥協点であるように思われる。

需要政策だけでは不十分

しかし、需要政策だけでは、失われた20年の再来を防ぐことはできず、ましてや光輝く20年を保証することはできない。人口減少が、1992年に発生した日本の金融危機やその後の長期的低迷を引き起こした主な要因であった。日本は依然として豊かな国であるが、1人当たり実質国民所得の順位を見ると、今や他の多くの先進諸国を下回っている。

日本の経験から欧州は重要な教訓を学ぶことができる。刺激策は需要を支えるために短期的に必要であるが、長期的な構造的欠陥に対処することはできない。アベノミクス2.0が徹底した構造改革を達成できなければ、アベノミクス1.0と同じレベルにとどまることになる。

週刊東洋経済2014年12月20日号

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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Kenneth Rogoff

1953年生まれ。1980年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。1999年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001〜03年にIMFのチーフエコノミストも務めた。チェスの天才としても名を馳せる。

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