いるいる! 話し合いを「ぶち壊す」こんな人 8種の「モンスター」傾向と対策〈第1回〉

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眠れる船長

お前が仕切らず、誰がやる!「眠れる船長」

「デストロイヤー」が概して攻撃的なのに比べるとかなりおとなしいのですが、「眠れる船長」は、話し合いを仕切るべき立場にいながら、実質的にその役割を果たせていないタイプです。

典型的には、仕切るべき人が、途中で議論についていけなかったり、議論の収拾がつかなくなって、沈黙してしまう場合です。結果、なんとなくいたたまれない感じで、上座に居座り続けることになります。実質的に「司会」の役割が果たされていないため、議論のスムーズな進行が妨げられてしまいます。

対策としては、静かな「クーデター」を決行することです。物理的に前方に進み出て、事実上、役割を交代します。当人も静かになっているので、「デストロイヤー」のように威嚇されるリスクはほとんどないと思われます。

議論もスムーズに回り出すのであれば、ほかの全員からも暗黙の承認が得られるでしょう。無血革命によって早めに実質的な全権を掌握しましょう。

ロジックオタク

そのロジックは必要ない!「ロジックオタク」

「ロジックオタク」は、過剰にロジックにこだわり、フレームワークやロジックツリーなどの思考ツールを乱用するタイプです。論点やアイデアを出しても、「これMECE(モレなくダブりなくという概念)じゃないから」との一言でほとんどの意見を捨てられてしまい、MECEにこだわりすぎているうちに、議論がまったく進まず悲惨な結果に終わったという例を聞いたことがあります。

むやみにフレームワークを使うのは、その場の文脈をつかまないととても奇妙に映るので、注意が必要です。ビジネス書を読んだりすると、使いたくなるのはとてもわかるのですが、自分の頭の整理にとどめておいたほうが無難なケースも多々あります。

似たような系列として、誰にでも明らかな言葉であっても、とりあえず何でも定義したがる人、何でもフェルミ推定したがる人、何でも脊髄反射的に因数分解し始める人などがあります。

よくあるのは、ロジックツリーの地図を作る際に、やたらと細かくやりたがる職人気質な人です。しかも、「細かすぎて、人に伝わらないレベル」まで、マニアックにやりたがります。経験的に、ツリーが3層以上に分岐すると、急速に納得感が減り、合意を得るのが難しくなります。頭の中だけでやってみる分には害はなく、むしろかえって当人の勉強になるのですが、これを話し合いの場でやると、皆が引いてしまいます。

こうして不要な定義づけ、フェルミ推定、因数分解、ツリー作りといった仕事を増やしてしまうので、何ら実質的な合意を出せないままに、話し合いの制限時間を迎えてしまうことがよく起こります。

対策としては、「時間は限られていますし、ロジックにこだわりすぎていても、皆が○○さん(ロジックオタク)のレベルについていけず議論が進まないので、ここはあまり気にせず意見を出していきませんか」とのように、相手のロジックへの執念に敬意を表しつつ、衝動を抑えてもらえるよう促すことかと思います。

第1回はここまでです。次回は、残り5種類の「モンスター」をご紹介していきます!

(イラスト:上田惣子/ブックスプラス)

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吉田 雅裕 東大ケーススタディ研究会

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よしだ まさひろ / Masahiro Yoshida

2010年、東京大学経済学部卒。外資系コンサルティング会社勤務を経て、東京大学経済学研究科修士課程修了。2014年現在、米国大学院経済学博士課程に在学中。東大ケーススタディ研究会立ち上げメンバー。
著書に、『現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート』『東大生が書いた 問題を解く力を鍛えるケース問題ノート』『東大生が書いた 議論する力を鍛えるディスカッションノード』がある。

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