26歳、女性経営者が魂を吹き込む伝統産業 「使い手目線」が改革の武器

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しかしながら、現状は女性目線が伝統工芸に反映されているとは言いがたく、商品開発の場面でも職人さんをはじめとして男性が担っている場合がほとんどです。それゆえ、矢島さんのような等身大のターゲット視点は、伝統工芸界で大きな可能性を持っています。

そんな可能性を感じて矢島さんは起業したたのですが、その際、周りからの反応は厳しいものだったと言います。

「伝統産業も子ども産業も、両方、衰退しているのにどうしてやるの? せっかく慶應の法学部に入ったのに、どうして起業するの? もうちょっと経営を勉強してから始めたほうがいいのでは? とさまざまな声をいただきました。でも、等身大の自分が欲しいって思えるものが、この伝統産業と赤ちゃん・子ども用品という組み合わせだったので、和えるを立ち上げたのです」

職人さんと対話をしながら丁寧なモノ作りをしていく

若い人の力が必要であるにもかかわらず、衰退産業であるという理由から新しい人材の流入が少ない業界は、伝統産業だけではありません。日本では金融や IT、メディアなど一部の業界に優秀な若い人材が集まりすぎています。しかし、保守的な業界こそ、新しいことに挑戦する人材が不足しているため、競合が少 なく、注目されるチャンスも多くあります。

矢島さん自身に発信力があるということもありますが、伝統産業×赤ちゃん・子ども用品×女性経営者という掛け算が、矢島さんのオンリーワンの活躍の舞台を作り出しているのも事実です。そして、このような新しい視点こそ、伝統工芸の世界が必要としているものだと言えます。

「若い力は現場でも受け入れられるようになってきています。以前から言われているような、後継者の問題や経済的な問題がいよいよ表面化し、厳しくなってきたこともあり、男性がほとんどの伝統産業の世界において、女性の新しい視点が必要だと言ってくださる人もいます」

女性目線が生かされた商品が並ぶ

現在、aeruでは20弱のオリジナル商品がありますが、それぞれにモノ作りストーリーだけではなく、矢島さん自身の女性目線が生かされていることが感じられます。

本藍染の産着

「aeruとして最初に作るものは、本藍染の産着と決めていました。日本に生まれてきてくれた赤ちゃんを、日本の“あい”でお出迎えしたい。藍と愛をかけています。赤ちゃんを、日本の藍(愛)に染められた、オーガニックコットンの産着で包み込むのです。そして、この本藍染の産着には、徳島県の職人さんが約30回前後、繰り返し手染めしてくれたというストーリーがあります」

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