「目利き」「異能べーション」・・・多彩な支援策

第2回 一時的なブームで終わらせないために

ベンチャービジネスのエコシステムを形成するためには、公的支援策において民間のプロの知恵、ノウハウ、ネットワーク、行動力を活かすことが必須です。また、その様な支援策を通じて民間支援者の層を厚くすることが、持続可能なエコシステムを作り出すことに繋がります。本稿では、民間のプロの力を活かしたベンチャー支援の試みについて解説します。

頑張る起業家たち

新経連サミットで注目を集めたWHILLの杉江理さん(撮影:風間仁一郎)

まず、いくつか新しい事業に取り組む起業家たちの事例を紹介します。

和える 「伝統産業の職人が一つひとつ、想いを込めて大切に作ったモノを21世紀の子どもたちの手に届けたい」との想いで矢島里佳さんは「和える(aeru)」を2011年に創業しました。伝統工芸品の市場は限定的で、職人さんが高齢化して先細りになるという業界の常識を打ち破るために起業したベンチャーです。日本全国の伝統産業職人の技と現代的なデザインを融合したオリジナルブランド“0から6歳の伝統ブランドaeru”を立ち上げ、新商品の企画・開発・販売までを一貫して手掛け、大手デパートやオンラインショップでの販売しています。また、大手企業に対する職人との協業のプロデュースなどを行っています。

ビーサイズ 「かっこいい電子機器を自分の手でつくりたい」と大企業を飛び出して「ひとり家電メーカー」を設立した若者がいます。ビーサイズの八木啓太さんは、スティーブ・ジョブスにあこがれて大学時代からデザインを独学し、富士フイルムにて医療機器の機械設計に従事した後、2011年に起業しました。汎用PCで作成した設計情報をネット経由で国内の中小企業と共有することで、短納期の製品開発体制をつくり、洗練されたデザイン、優れた加工技術、先端デバイスを融合した、国際競争力のある製品開発を目指しています。

WHILL 杉江理さんは日産自動車のデザイン本部を経て、中国で日本語教師に従事した後、世界各地へものづくり探訪の旅に出ていたとき、「車いすやシニアカーは病人に見えてしまう」、「かっこ悪くて乗りたくない」という車いすユーザーの訴えを聞いたことをきっかけに、同じく大企業をスピンオフした仲間とともに2011年にWHILL を創業しました。「全ての人の移動を楽しくスマートにする」を理念に掲げ、足が不自由な方も楽しく外出でき、健常者も乗りたくなるようなかっこよく機能的なモビリティを開発しています。

Lifilm 介護の負担で家族が壊れていくことを目の当たりにした宇井吉美さんは、高齢者介護の現場で、トイレ誘導やおむつ交換など、排泄に対応することの負荷が介護者に重くのしかかっていることを解消するため、大学在学中の2011年にabaを創業しました。独自の技術で排泄シート「Lifilm」を開発し、臭いセンサーで排泄状況を知らせ、そのデータをクラウドコンピューティングで分析することで排泄リズムを把握し、より良い介護を実現することを目指しています。

LOUPE 「教育の現場で悩む先生が多く若手の離職率が増えている。そんな先生方を支え抜くことでより質の高い教育を先生方が提供できるようにしたい」そんな想いから、ベネッセ、転職サイト会社、モルガン・スタンレー証券を退職し、一軒屋で共同生活を始めた若者3人がいます。浅谷治希さん、末永昌也さん、青柳健一さんは2013年にLOUPEを立ち上げて、学校の先生同士がつながるWEBサービス「SENSEI NOTE(センセイノート)」を運営。子供と向き合い奮闘する先生同士が本音で交流・相談・発信することを通じ、学校がもっと活き活きとした場に変化することを目指します。

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