漁獲枠「半減」では不十分、マグロが消える日 太平洋クロマグロの資源量は過去最低レベル

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それだけでなく、産卵期の魚の漁獲規制が強化されなかったことも、問題だろう。日本海のクロマグロの産卵場に近い鳥取県・境港では今年1564トンを水揚げしたが、その中身はかろうじて成魚になった30~40キログラムのサイズが中心。こうした漁が過剰に行われると、資源に大きな打撃を与えかねない。

メバチマグロも「濫獲状態」

水産庁は産卵期のマグロに対する規制強化について「検討中」としている。「親魚が産卵し、卵が孵化(ふか)するかどうかは不確実な部分もある。それより未成魚の規制を優先したほうが効果的」(資源管理部)という理由からだ。ただ大西洋まぐろ類保存国際委員会が産卵期を禁漁にした事例もある。クロマグロは産卵場が日本近海で日本が漁獲の主体だけに、「日本がきちんと規制をすれば、必ず資源回復のメリットを享受できる」と勝川准教授は強調する。

実は、マグロをめぐる懸念は、クロマグロだけではない。WCPFCの科学委員会が8月に公表した資源評価で、太平洋クロマグロに続き、中西部太平洋のメバチマグロも新たに「濫獲状態にある」と認定されたのだ。

メバチは刺身やすしのネタとして、日本で最も多く消費されているマグロ。高級魚のクロマグロと比べ、漁獲量は約8倍ある。アジアからの輸入も多く、日本が世界最大の消費国だ。メバチが枯渇すれば国内のスーパーや外食に打撃を与えるのは必至。こうしたマグロの資源保護を図るうえでも、今回の漁獲規制がうまく機能するかどうかが、大きな試金石となるだろう。

「週刊東洋経済」9月13日号(8日発売)の「核心リポート01」から転載)

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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