養殖量の制限やむなし、狭まるウナギ包囲網 おいしい鰻重や蒲焼きは今後も楽しめるのか
「ここ3年で3回値上げした。お客さんに悪いとは思うが、上げざるをえない」。東京・練馬でウナギを扱う店の店主は苦しい胸の内を明かす。3年前、「上うな重」の価格は1800円だったが、今年4月の値上げで2900円にした。
背景にあるのが急激な仕入れ値の上昇だ。5月中旬、この店ではかば焼きにするウナギの仕入価格が1キログラム=6000円台まで高騰した。「3年前は2000円前後だった。30年間ウナギを扱っているが、ここまで値上がりしたことはなかった」(店主)。
減少する稚魚の漁獲量
価格の高騰はウナギの稚魚の不漁から来ている。水産庁の統計によると、稚魚の国内漁獲量は1963年に232トンとピークを迎えたが、ここ10年は10~30トンの間で推移し、価格がジワジワと上がってきた。さらに昨年は漁獲量が約5トンまで落ちた。輸入した稚魚を合わせても過去最低の水準で、価格は1キログラム当たり250万円と、10年前の水準から15倍までハネ上がっている。
ウナギは生態が解明されておらず、卵から育てる完全養殖が確立されていない。そのため、例年冬から春にかけて稚魚を捕獲し、成魚に育てている。日本の養殖で扱う品種はほとんどが「ニホンウナギ」であり、国内で消費されるもののうち、天然物は1%だけだ。
稚魚の減少について、ウナギ研究の第一人者である日本大学の塚本勝巳教授は、「産卵に向かう親ウナギも稚魚も、取りすぎが第一の原因だろう。ほかに、水質汚染や河川工事、ダム建設などで河川環境が悪化したことや、気候変動による海流の変化が、資源減少の原因と考えられる」と解説する。