マネジメントは「北風」型か「太陽」型か? 東京海上日動火災の佐藤重実部長に聞く(後編)

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 女性部長というと、どのようなイメージを持つだろうか? 仕事はできるけどキツい人、という印象を持たれがちだが、東京海上日動火災保険の佐藤重実さんは、先入観を覆すような明るく気さくな方だ。社内でも、部下は楽しくイキイキと仕事をしている。そのマネジメントスタイルは、北風と太陽でいえば、明らかに太陽型だ。一般的には、北風型のほうが少なくとも短期的には成果が上がると言われるし、太陽型で成功は難しいとも言われる。それにもかかわらず、なぜ佐藤さんは、太陽型マネジメントを行うのか。太陽型マネジメントのコツとは何か。

※前編はこちら

障害者雇用の新会社を設立

三宅:佐藤さんは「超ビジネス保険」(以下、「超ビジ」)という大型商品の開発を経て、2007年に人事企画部に異動になり、ここでも「東京海上ビジネスサポート」という新会社を立ち上げています。こんな大きな仕事は、なかなか立て続けに任されないですよね。佐藤さんだからこそ、任せたくなるのでしょうね。

佐藤:たまたまそういう時期に巡り合わせただけですよ。

三宅:謙遜が多いのも、佐藤さんらしい特徴ですね(笑)。

佐藤:今、振り返ると、本当にいい体験をさせていただきました。「東京海上ビジネスサポート」は特例子会社といって、障害者雇用を推進する会社です。それまでも当社は障害者雇用に積極的に取り組んでいて、法定雇用率も満たしていました。でも、知的障害者の方や発達障害者の方に対する企業の環境づくりはまだ不十分でした。そこで、もっと障害者の方を広く雇用する仕組みはないかと、検討していたのです。

その後、いろんな特例子会社を見学しました。そうしたら、知的・発達障害者の方は、特定分野に秀でている方が多いことにびっくりしました。パソコンがすごく得意な方とか、これを任せたら右に出る者はいない、というほどのスピードで作業ができるようなすご腕の方がいる。そういう方たちが能力を発揮する場を用意できれば、その方もイキイキ働けるし、会社としてのダイバーシティも推進できるということで、特例子会社を設立することにしました。

でもそこに至るまでは、侃々諤々の議論もありました。「特例子会社など作らず、同じ職場に机を並べて働いてこそ、真のダイバーシティと言えるんじゃないか」など、さまざまな意見が出ました。いろんな人の価値観があることを、すごく感じましたね。

三宅:佐藤さんは、バラバラの価値観をまとめなければいけなかったわけですね。

佐藤:そこはけっこう難しかったですね。人によっては最後まで折り合えないところもありました。

三宅:徹底的に議論する方向に持っていったのですか?

佐藤:そうですね。しっかり議論して、こちらの考えも説明して、コンセンサスを得ようとしたけれど、やっぱり違う意見を持ってる人の考えを変えるのは難しかったです。なので、組織としての機関決定を積み上げていくことになりましたね。

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