"役に立たない"基礎科学が大事なワケ 基礎研究、応用研究、開発研究の関係

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1987年2月23日、大マゼラン星雲で発生した超新星SN1987A。右は爆発前。(アングロ・オーストラリア天文台/Daved Malin撮影)

日本ではいろいろな科学についての研究が進んでいます。天文学では、地球外生命を見つける大きな夢をかかげ、太陽系の外に地球のような惑星を探すプロジェクトが注目を浴びています。新しい薬を開発する研究もあるし、ロボットを作り人間らしさとは何かに迫る分野もある。さまざまな科学があり、さまざまな目標を掲げて研究している人がいます。それが日本の強みといっていいかもしれません。

しかし、さまざまな科学が整理されずバラバラに存在しているわけではありません。これをきちんと分類することによって、はじめて外から一定の評価をすることができます。そこで今回は、科学を見るコツ、科学を見るときのモノサシとなる科学の分類を紹介します。

役立つ科学か

これまでの連載記事で、巨額の予算・時間・人材がかかるのがビッグサイエンスである、と説明してきました。予算規模で言えば、1プロジェクトあたり100億円以上が目安です。ビッグサイエンスには、従来からの巨大施設を必要とするものと、巨大装置は必要なくても多くの研究者のネットワークを巧みに構築し連携するネットワーク型のふたつがあります。ここではそれとは少し異なる角度から分類を試みます。

研究者が高校生の前で話をすると、必ずと言っていいほど出てくる質問があります。それが「何の役にたつのですか」という質問です。この質問、簡単なようでかなり手ごわいものです。答え方によって、その研究者の度量のようなものが透けて見えてしまうことも少なくありません。

2002年に、小柴昌俊先生(東京大学特別栄誉教授)がノーベル物理学賞を受賞した際、多くのメディアが「その成果は将来、何かの役にたつのでしょうか」と聞きました。

小柴先生は、大きな星が最後に爆発するとき(超新星爆発)に放出されるニュートリノという素粒子をとらえることに成功しました。このニュートリノという素粒子は以前から知られているものでしたが、超新星爆発によるニュートリノを捉えたのはこれがはじめてでした。この素粒子は1秒間に私たちの体を何兆個も通り抜けるほど大量に存在しますが、その存在を感じることはほぼありません。なぜなら、物質とほとんど反応しないからです。そのような物質が、将来、通信か何かの「役に立つ」とは考えにくい。そこで小柴先生は「まったく役立たない」と、明快に説明していました。

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