なぜ科学に巨額な予算が必要になったのか 新しいビッグサイエンスの時代が到来

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右端が、1961年にサイエンス誌でビッグサイエンスを論じたアルビン・ワインバーグ博士(1960年5月18日、写真:AP/アフロ)

みなさん、はじめまして。横山広美と申します。東京大学の理学部に所属し、理学部の科学を伝える広報室のマネジメントをしながら、現代科学論・科学コミュニケーション分野の研究・教育を行っています。 

勤務場所があるのは、東大本郷キャンパス安田講堂裏の理学部1号館。この建物は、正門を入って正面にある安田講堂裏にあります。1階には、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊特別栄誉教授のノーベル賞の盾やメダルが展示されています。歴史ある理学部では約300人の教員がおおよそ2000人の学生と共に研究に取り組んでいます。

2007年に着任してからこの場所で、科学を伝える活動をすると同時に、科学と社会の間に起きる解決が困難な問題をウォッチし、社会に貢献する科学の情報発信のあり方を研究してきました。楽しくわくわくする科学はもちろん、東日本大震災に貢献する科学、経済に貢献する科学、あるいは国際政治の問題に貢献する科学まで、理学部の中では幅広い科学が進められています。そのため、単に科学の情報発信といっても社会科学や心理学、国際政治学などの広い分野との連携のもと考えることが必要になります。

2014年は、日本の科学界にとって試練の年となりました。日本では2000年代に入ってから発覚する研究の不正が増えています。その中でもSTAP細胞に関する疑義は世間の関心を大きく集め、研究の在り方や研究所の運営にも注目が集まる結果となってしまいました。なぜこのようなことが起きるのでしょうか。日本が誇る科学技術は大丈夫なのでしょうか。

連載では日本の科学界が置かれている現状とその問題点、また科学の情報発信のあり方について、主に基礎科学と呼ばれる、研究者の自由な発想から生まれる科学を見ている者の視点から、わかりやすく解説します。第1回は、今の科学を象徴するキーワードとして、「ビッグサイエンス」について考えていきます。

ビッグサイエンスとは何か

「ビッグサイエンス」。それまでの科学の在り方とは異なる、この特殊な科学については、1961年に米国の物理学者、アルビン・ワインバーグがその在り方や問題点をサイエンス誌にまとめ、注目されました。

ビッグサイエンスは政府による巨額の資金投資のもと、大人数の科学者が集められ、長い年月をかけて行われる科学のことです。ビッグサイエンスの「ビッグ」は、このように予算、研究者の人数、かかる年月が他と比較して大きいことを意味しています。米国においては原爆開発のマンハッタン計画が最初のビッグサイエンスと言われていますが、冷戦時代にはソ連に勝つための宇宙開発がその象徴であるとも言えます。

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