中国も白旗?ベトナムの「じらし戦法」 中国に負けないベトナムから何を学ぶか(下)

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待たされ、焦らされ、前金まで要求されるケースも

日本企業がベトナムに進出する場合、現地の制度上の問題から合弁事業とするケースが多い。特に、製造メーカーとして経営をする場合は、ありとあらゆる種類の、現地での許認可を取る必要があるので、ベトナム側のコネを頼ることになる。一方、独資(自己資本100%)のケースでは、すべての決定メカニズムは自分で決められるから、一般論としては、誰にも相談することなく、うまく運営できる可能性がある。

なまじ合弁会社になると、相手のあることだから、話はややこしい。まだ読者の記憶に新しいと思うが、2010年、中国がレアアースの輸出を停止した事件が起こったときのことだ。中国からの安定供給が期待できないので、当社(AMJ)はベトナム企業からの誘いでレアアース資源の開発を検討したことがある。

「ある民間企業が、ベトナム政府から開発権を受託した」というので、共同でレアアース開発できるかもしれない、と興味を持った。だが、実際には「話ばかり」で具体的な契約は、すべて先送りになった。なんのことはない、レアアース資源の多様化を進めようとする、われわれの足元を見透かすように、ベトナム側に有利な条件ばかりを押し付けてきた。

日本側としては、中国からのレアアースが入ってこないので急いでプロジェクトを進めたいのだが、「政府との直接交渉は、特定の政治家の援助が必要だ」という理由で、常に待たされ、焦らされた。まだ何も始まっていないにもかかわらず、鉱区の開発申請のために前金を要求されたりもした。少しでも弱みを見せると、そこに付け込んでくるのがベトナム流で、「くせ者」と言わざるを得ない。

このほか、ベトナム企業と日本の大手商社の一角が、レアアース資源の開発を進めたが、この一大プロジェクトも基本的に当社の民間プロジェクトと同じように、暗礁に乗り上げたようだった。開発に関わる権利と義務の関係がハッキリしないために、うまくいかないのである。

初めてベトナムに行くと、ベトナム人のもてなしは良い。全般的に対日感情も良いので何事もスムーズに進むように感じる。だが、いざ金銭勘定に移ると「船頭が多くて」話がまとまりにくいのである。交渉相手はコロコロ代わるし、意思決定権者が誰なのかはっきりしないのだ。全ての損得勘定が、裏政治で決まっているようにも感じる瞬間があった。

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