フィリピンは中国の膨張にどう対抗するか

バナナが取り持つ日本との強力な友好関係

 中国の海洋進出の動きが強まっている。東シナ海では尖閣諸島の領有を狙い、南シナ海ではパラセル諸島近海で石油を掘削している。スプラトリー諸島のジョンソン礁では港を建設すべく埋め立て工事を開始した。強大化する中国は、これらの国を超えて太平洋までの進出を狙っている。
 こうした中国の侵奪行為に対してフィリピンは2013年1月、国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所に提訴している。
 またベニグノ・アキノ比大統領は2014年2月、米ニューヨークタイムズ紙のインタビューで「間違いと信じることに妥協すると事態がさらに悪化する可能性がある」「第二次世界大戦を避けようと、ヒトラーをなだめるためにズデーテン地方を割譲した歴史を忘れてはならない」と、中国について世界に警鐘を鳴らした。マニュエル・ロペス駐日フィリピン大使に、対中国戦略を聞いた。
マニュエル・ロペス駐日フィリピン大使

――なぜ中国は南シナ海への野心を持っているのでしょうか。

南シナ海は石油などの天然資源が豊富に埋蔵されている。急速に経済を発展させている中国にとって、大量の資源を確保することは喫緊の課題であり、さらに発展を持続させるために必要不可欠なことなのです。南シナ海を制することで、太平洋やインド洋への出口をも確保できる。軍事力を増強させている中国は海軍のルートを作り、軍艦を自由に航行させたいのです。

――同じように中国の侵奪行為に悩まされているベトナムでは、最高指導者のグエン・フー・チョン共産党書記長が7月1日、戦争も含めてあらゆる可能性について言及しました。

ベトナムには昔から、大国の侵略に対して戦ってきた歴史がある。太古の昔から中国の侵入を受け、近代になってからはフランスの植民地にされた。こうした侵略に対してたびたび抵抗し、独立運動を展開してきたのです。ベトナム戦争ではアメリカとも長期にわたって戦いました。

よってたとえ係争地が狭くても、資源に乏しくても、彼らの士気は変わりません。ベトナムは断固として外国からの侵入を許さず、排除してきたのです。よってどんなに中国が巨大な覇権国家であっても、ひるむことはないでしょう。

フィリピンは武力行使をしない

――ベトナムと同じように中国から侵奪を受けているフィリピンも同様に、中国に対し武力行使も辞さない覚悟ですか。

いえいえ、我々は武力行使を好みません。第一、我々には中国と十分に対峙できるような強大な軍事力がない。たとえどんなに中国に席巻されようとも、我々は平和的手段で紛争を解決していきたい。今年3月30日には、国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所に申述書を提出しました。国際法に基づいて紛争を平和裏に解決することが、この問題に対する我々の変わることのない姿勢です。

――しかし中国は、フィリピンが提訴した仲裁裁判を断固として受け入れようとしていません。

そこで我々は、国際世論に訴えたいのです。国際世論を味方につけることは、もっとも有力な平和的紛争解決方法です。どの国も、国際社会から孤立して生きていくことはできませんからね。

そのためには、その強い経済力で全世界に大きな影響力を持つ日本はもちろん、最も力強い盟友であるアメリカの協力を得たい。国際世論を味方につけて中国の愚行を批判することこそ、我々がとれる唯一の手段なのです。

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