富士通の“不可解な事件”と経営トップ--トップの仕事は「部下の働き」を曇りなき目で見ること

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部下についての情報が少ないということは、経営者としてはかなり気をつけなくてはいけないことだ。人事に響いてくる。人事、つまり社員の用兵で、社員を的確に動かせなくなる。経営者としては、これは根本的に的確性を問われる要素である。

それでなくても、日本の企業は、エコひいきや「空気」といった気分、派閥や一族などの閨閥などで人事を決めることが多い。そうした人事は、組織全体のやる気を失わせる。

「Dはいかん」「Eは少し不安だな」「Fは大丈夫かな」

そんなマイナス思考もD、E、F各氏のやる気をそぐことになりかねない。企業の盛衰は、人事、社員の用兵で決まるのに、適切な用兵ができない。

「Gは知らんな」に至っては、G氏のプライド、やる気は吹き飛んでしまうことになる。これではどんな企業、ビジネスモデルでも、衰亡の方向に流れるのは自然の理になる。

業績悪化を「社員のせい」にするとはありえない話

その昔、といっても2001年のことだが、「業績が悪いのは、社員の働きが悪いからだ」と発言した経営者がいた。この発言はその当時、もちろん良い意味ではないが、大きな話題となった。経営計画は間違っていなかったが、社員たちの実行が悪くて、業績が悪くなった、というのである。

当時、兜町の証券筋は、「あの経営者は辞めませんかね、辞めたらあの会社の株価が上昇するのですがね」とプロっぽい見方で皮肉な意見を言ったものである。

「あの経営者」とは、富士通の秋草直之社長(当時)のことだった。

「業績が悪いのは、社員の働きが悪いからだ」--。このロジックでいけば、社長に悪いことは何もない。経営責任はまったくないことになる。

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