30代でがんになった母が体験した想定外の事態 子どもへの告知、副作用、職場それぞれの難問

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若くしてがんになった田神靖子さん(仮名)が経験したこととは?(写真:筆者撮影)
国立がん研究センターの統計によると、2016年にがんと診断された約100万人中、20歳から64歳の就労世代は約26万人。全体の約3割だ。
だが、治療しながら働く人の声を聞く機会は少ない。仕事や生活上でどんな悩みがあるのか。子どもがいるがん経験者のコミュニティーサイト「キャンサーペアレンツ」の協力を得て取材した。
今回は、十二指腸(胃と小腸の間にあり、胆のうから分泌される胆汁と、すい臓から分泌されるすい液が食べたものと混ざり合い、消化をうながす器官)がんの告知後、夫や子どもたちが戸惑いながらも力を合わせて乗り切った田神靖子さん(仮名、43)の話です。

長男と3人で治療方針を聞いた理由

がんになったことを子どもに伝えるのか、伝えないのか。

親によって判断が分かれる。伝えるにしても、まずは親が治療の方針や、退院の見通しなどを医師から聞いたうえで、理解できると思われる年齢の子どもに慎重に伝える。筆者もそんな話を何度か聞いてきた。

自治体職員の田神さんのケースはめずらしい。靖子さんはステージ3の十二指腸がんと告知されたが、その具体的な治療方針を主治医から聞く際、夫の隆弘さん(仮名、47)と長男(16)を同席させたからだ。

主治医はレントゲン写真を指差しながら、靖子さんに説明したという。手術時間は12時間を見込み、十二指腸を切除して胃と小腸をつなぐために、術後の経過がよくない症例もあると語った。2016年10月のことだ。

医師による手書きの説明(写真:田神さん提供)

長男には女性医師が別途、必要に応じてボールペンで図を書き、彼によりわかりやすい説明を加えてくれた。靖子さんは、子どもに伝えないということは最初から考えなかったと振り返った。

子どもたちは当時、18歳の長女、16歳の長男、10歳の次女の3人。

「長女は生真面目なしっかり者なので、かなりショックを受けてしまうかもしれないと心配しました。一方で、長男は何事もマイペースで楽観的。ですから、そんな長男に医師の説明を一緒に聞いてもらい、彼からさらっと伝えてもらったほうが、姉妹の動揺も少ないだろうと考えたんです」

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