アベノミクスでも注目を浴びる、「女性の活用」。一見、聞こえのいいこの言葉、実は大きな問題をはらんでいるという。本連載では、そんな「男と女」にかかわるさまざまな問題を、異色の男性ジェンダー論研究者が鋭く斬る。
「痴漢は犯罪です」という駅のポスター、私は最初に見たとき、「はぁ?」と思ってしまいました。「強盗は犯罪です」というポスターはないでしょう。なぜそれと同じような犯罪を「犯罪です」とわざわざ強調し、啓発しなければならないのでしょうか?
女性差別の問題を扱っていると、必ずと言っていいほど、「女性専用車両は男性差別ではないのか」という反論を受けます。「逆差別」か否かが問題となるのですが、これは痴漢が歴史的には比較的新しい存在で、まだ「犯罪」としての理解が進んでいないから起きる現象なのかもしれません。
女性専用車両の歴史は古く、1912年の中央線にさかのぼります(その後、廃止されたわけですが)。当時は「婦人」が男性と近接する状況自体を避けるべきと考えたからで、かなり古典的な空間感覚です。現代はもっと男性と女性の体が密着しています。
電車の優先席は「健常者差別」だと思いますか? もしそうでないとすれば、犯罪に特に遭遇しやすい人たちのために、空間を確保するというのは、優先席と同様に社会が認めるべきことではないでしょうか。
トピックボードAD
有料会員限定記事
キャリア・教育の人気記事
ログインはこちら