電通とフジ・メディアHDを分析する 広告業界は、どれだけ好景気の影響を受けたのか?

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「のれん」とは、企業を買収したときに発生するもので、被買収企業の純資産額と買収額との差額です。企業の帳簿上の価値は純資産額にあたりますが、それ以上の金額で企業を買った場合は、「のれん」という項目で貸借対照表の資産の部に計上されるのです。

ただ、日本の会計基準では、企業を買収したときに、のれんを20年以内に均等償却しなければならないというルールがあります。電通の場合は、イージス社の買収によって年間約245億円の「のれん償却額」が発生し、業績に重くのしかかります。

その結果、営業利益は381億円から347億円まで8.9%減となりました。ただし、のれんなどを償却する前の営業利益は、413億円から663億円まで60.4%増えていますから、収益自体は改善しているのです。言い方を変えますと、今のところ、電通の業績は、イージス買収ののれん償却が足を引っ張っていると言えます。

次に貸借対照表(同7~8ページ)の分析に移ります。「純資産の部」を見ますと、「資本金」と「資本剰余金」が合計約550億円増えていることが分かります。これは、昨年夏に公募増資を行ったことが反映されているのです。

会社が中長期的に安全かどうかの目安となる自己資本比率(純資産÷資産)を計算すると、36.3%と高水準です。業績はそれほど改善していませんが、安全性にはまったく問題ないと言えます。また、のれんの償却はキャッシュが出ていかない費用の増加ですから、キャッシュフロー的にも問題は小さいと言えます。

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