電通とフジ・メディアHDを分析する 広告業界は、どれだけ好景気の影響を受けたのか?

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2013年の推移を見ますと、5月以降、前年比プラスの水準が続いていることがわかりますね。同じく名目GDPも順調に伸びていますから、同年の広告業の業績は、景気回復の影響から好調に推移したのではないかと予測できます。

では、実際のところ、広告業の業績はどれだけ好影響を受けたのでしょうか。電通とフジHDの決算内容を詳しく見ていきましょう。

売上高は伸びたが、買収が足を引っ張った電通

初めに、電通の平成26年3月期第3四半期決算(2013年4~12月)から分析します。前年である2012年の12月は、ちょうど政権交代が行われた時期でしたから、今期の決算は、アベノミクスの影響がまったくないときの業績と、影響が出た2013年の業績とを比較することができます。

まず、損益計算書(9ページ)から見ていきましょう。売上高は、前年同期の1兆4121億円から、今期は1兆6624億円まで17.7%増となりました。売上原価も若干増えていますが、売上高の伸びが大きいことから、売上総利益は2489億円から4143億円まで66.4%も伸びています。

これは、2013年3月26日に英広告大手のイージス社を買収したことで、今期から同社の業績が連結損益計算書に反映され、売上高などがカサ上げされたのが大きな理由です。

なお、売上高の業種別内訳によると、特に伸びているのが金融や自動車となっています。本コラムでも分析してきましたが、これらはアベノミクスの好影響を受けた業種です。その意味では、やはり広告業もアベノミクスの恩恵を享受したと言えるでしょう。

損益計算書に戻ります。販売費及び一般管理費(販管費)が、2108億円から3796億円まで80.1%も増えていますね。特に増えているのが、「給料及び手当」「福利厚生費」「のれん償却費」です。これは、被買収企業の給料や福利厚生費が足し合わされたのと、買収に伴って「のれん償却額」を計上しなければならなくなったことが原因です。

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