日テレは、Huluで100億円稼げるか? 船越雅史・コンテンツ事業部長に聞く(下)

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 2月28日、日本テレビ放送網(日本テレビ)は米国の定額動画配信サービス「Hulu」の日本事業を譲り受けることを明らかにした。これによって早 ければ4月から、民放として初のSVOD(Subscription Video On Demand:定額制動画配信)サービス事業に着手することになる。
 テレビとスマートフォンを組み合わせて視聴するソーシャルテレビサービ ス「JoinTV」を独自開発するなど、他局の一歩先を歩き、テレビとインターネットとの融合に取り組んできた日本テレビ。また新たに、Huluの日本事 業買収という大きな賭けに出たそのワケを、日本テレビ放送網・事業局コンテンツ事業部長の船越雅史氏に聞いた。 
※ 前編はこちら:日テレが、Hulu買収で仕掛ける「動画革命」

無料と有料は見られ方が大違い

――Huluはどのような事業モデルを採用するのでしょうか。無料と有料のハイブリッド型でしょうか。

事業のあり方が変わる変わると言われ続けて、なかなか変わらないものの代表格が、電子出版と動画配信ですよね。先行する朝日新聞デジタル、読売プレミアム、日経電子版などテキスト型の配信事業は、いまだに無料の広告モデルか、有料の課金制モデルかで右往左往していて確立できていません。その流れを見てきて、動画配信は必ず、定額配信と無料配信のハイブリッド型になると予測しています。

だからこそ、他社に先駆けて今年1月から、ドラマ放送後1週間無料視聴ができるテレビ番組のキャッチアップサービス(見逃し配信サービス)を試験的に開始しました。これは、将来的にHuluで無料の広告モデルも実現可能かどうかの検証実験的な意味合いもあります。

また定額制動画配信も、今回のHuluの日本事業子会社化の話が持ち上がらなかったとしても、われわれ独自に開発して自力でやろうと考えていました。

無料での動画配信をやってみてびっくりしたのは、見られ方が有料の場合とまったく違うんですよ。たとえば、1話300円で購入した番組は、1回で最後まで途切れなく見てもらえます。視聴可能期間は1カ月あるにもかかわらず、です。それが無料の場合、10分見て中断して、また再開後10分して中断、と細切れで見る。もっとドラスチックな違いも起こっていて、なるほどとうならされました。Huluという定額制では、またまったく異なるデータが集まってくるだろうと想像しています。

これらのデータを基に、どういった形でハイブリッドにしていくかが、今後の検討課題のひとつですね。米国Huluはまず無料でスタートして、有料がメインになるように移行していますが、その点、もともとDVDレンタル会員向けの無料付加サービスとして動画配信サービスをスタートさせたネットフリックスの後塵を拝しているという現状があります。コンテンツの出し方にしても、米国ではまず最新作を有料で、少し経つと無料の広告モデルで提供するというやり方が主流です。

そこは逆の出し方をしても面白いかなとは考えています。1週間だけ最新作のドラマ、アニメ、バラエティを無料で提供し、1週間経った後は有料にするというのはどうなのだろうとか。アーカイブ作品も2~3年経つと、定額見放題のコンテンツの中にあっても視聴数は少なくなる傾向にあるので、こういったコンテンツは広告モデルの無料動画として提供したほうが収益性は高まるかもしれませんよね。

定額制で見られないものが無料なら見られるのかなど、検証しなければならない点は数多くありますが、まさに今が考え時。ハイブリッド型を3年後に実現させようと思えば、今から考えておく必要があります。

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