日テレは、Huluで100億円稼げるか? 船越雅史・コンテンツ事業部長に聞く(下)

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この業界の3年先はわからない

無料動画配信をCMの観点から考えると、全国規模で広告戦略を行っているナショナルクライアントの中にも、動画CMを展開したいと考えているところは多いのです。ところが、出し口がない。YouTubeには違法コンテンツも含め、有象無象のコンテンツも数多く、二の足を踏んでいるクライアントも多いようです。きちんと権利処理がなされていて、コンテンツホルダーが制作した番組だけが並ぶプラットフォームがあれば、間違いなく需要はある。

船越雅史(ふなこし・まさし)
日本テレビ放送網 コンテンツ事業局コンテンツ事業部長
1986年早稲田大学政治経済学部卒業後、日本テレビ放送網に入社。アナウンサーとして、プロ野球、ボクシング、箱根駅伝などのスポーツ中継、ニュース、情報番組を担当。その後、ライツ審査部、ライツ事業部を経て現職。

ただ、いちばん考えなければならないのは、視聴者の需要がどこにあるかですよね。電通が実験的に、「CMを30秒見れば課金時に割引します」という取り組みをやったことがあったのですが、CMを見ずに通常料金を支払ったという利用者が、想像以上に多かったのです。見たいコンテンツなら、CMがあっても見るのか、見たいものならおカネを払ってでも見るのか、都度課金と月額課金の場合ではどうなのか、ドラマ、バラエティ、新作、旧作によって視聴者のニーズはどう異なるのか。

テレビCMとは違い、ターゲット広告も「車のCM」「青いセダン」なら見るが「車のCM」「赤いSUV」は見ないというところまで、ターゲットを絞ることができます。最後まで見てもらえるCMはターゲットCMなのか、番組にひも付いたものがいいのか。CMの価値単価を高める方法を生み出すべく、無料動画配信モデルは、今後3年間で検討することが山ほどあります。

ただ、まずは定額制動画配信事業を確立させる必要があります。ある程度の会員数に達しなければ、無料動画配信をやったところで広告が集まりませんから。無料と有料のハイブリッド型は何年も先の話になると現時点では考えていますが、この業界の3年先はわかりません。スマートフォンがこれだけ急速に普及すると、5年前に誰が予測していたでしょうか。コンテンツ事業部の部員に言っているのは、「予見ができないのであれば、時代に遅れずついていこう」ということ。

6年先の東京オリンピック後は、みなさんの想像以上に世の中が変わっているはずです。米国ではすでに起こっていることですが、動画配信が先で地上波放送が後になっている状況もありえます。あらゆるコンテンツをインターネット上でも見られるのが当たり前の時代が来るでしょう。

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