日テレは、Huluで100億円稼げるか? 船越雅史・コンテンツ事業部長に聞く(下)

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売上高100億円が目標

――米国では、DVDレンタル事業からスタートした動画配信サービス大手ネットフリックスが、自社制作ドラマ「ハウス・オブ・カード」でゴールデングローブ賞にノミネートされ、話題を集めました。米国での出来事とはいえ、動画配信事業者が成し遂げた快挙に、危機感を覚えたテレビ局関係者は多かったようですね。

圧倒的な資金力に、ただただ、びっくりしました。東京オリンピック後の日本でも徹底的におカネをかけて、動画配信用のドラマを作りましたという事業者が出てきてもおかしくはありません。

YouTubeを筆頭に、アマゾン、日本ではGyao! など数多くのコンテンツアグリゲーターが存在します。それらアグリゲーターとテレビ局の関係を、テレビ受像機製造メーカーと量販店のような関係にしたくはないという思いはありました。コンテンツホルダーとして、流通にすべてを握られたくはない。

数多くの動画配信プラットフォームに出せば作品の販売は伸ばせるけれども、突然「来年から料率を半分にします」と言われたら、「了解しました」としか言えない状況になっては困ります。放送事業者としては、コンテンツを制作し、電波を通して流す、その両方を今後も管理していきたい。われわれはコンテンツアグリゲーターでありたいと、常々、考えていました。

――今後はコンテンツアグリゲーターとして、Hulu事業をどのように大きくしていくか、ということになりますね。

現在、地上波放送事業がだいたい年間3000億円の売上高なので、ひとつの事業として会社に影響を与えられる売り上げ規模、年間売上高100億円の事業として成長させることを目指しています。

Huluが日本で事業を開始したとき「100万人に達したら会員数を公表します」と言っていたそうです。まだ発表されていないので、100万人に達していないということになりますが、そう遠い将来ではなく達成したいですね。

認知度をもっと高めていかなければなりません。現在の会員の方々は、Huluの強みであるハリウッドドラマを見たいというのがあると思いますので、まずはそこの強化。より新しいものをより早く出す。

具体的な策はまだこれからですが、国内のコンテンツを充実させるための構想のひとつとしては、放送中のドラマやアニメの見逃し配信があります。日本テレビの動画配信に対する考え方は一歩進んでいるところがあるので、今はまだ見逃し配信を無料でやることはできないという放送局が多いのが実情ですが、自社のドラマにかかわらずラインナップを拡充できるように、この点でも各社に協力をお願いしていくつもりです。

ただ、コンテンツ数に関しては、現在の1万3000~1万5000という数をこれ以上増やすことが、サービスの充実につながるものでもないのかなと感じています。やってみなければわかりませんが、量より質。いろいろなコンテンツを入れ替えていく作業が大切になると思います。

日テレオンデマンドでは、何をいつトップ画面に置くかが非常に重要です。たとえばドラマ「ホタルノヒカリ」は、映画化されたタイミングでシリーズ1とシリーズ2をトップ画面に置いたらたくさんの人に買ってもらえました。映画のプロモーションも兼ねて、コンテンツとしてもよく売れる。こういった戦略的な出し方を研究していきたいと思っています。

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