広がる"資格貧乏"!税理士、社労士の悲哀 弁護士、公認会計士だけじゃない

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「高齢税理士問題」を語るうえでは、こんな面白いエピソードもあります。

この本を作るとき、担当編集者が最新データを確認するために日本税理士会連合会に「税理士の年齢構成」について確認の電話を入れたところ、「80代11.4パーセント、90代0.78パーセント、100歳以上0.01パーセント……」とまったく平然と読み上げられて(ちなみに税理士は2013年1月1日時点で60代以上が52.99%)、思わず笑いだしそうになったそうです。

100歳以上をちゃんと統計で出しているところが、さすが税理士と思わずにはいられません。

おじいさん税理士が、現役でいられるワケ

さて、なぜ国税上がりのおじいさん税理士が、いまだ現役でいられるのか? それというのも、国税上がりはいまだ顧客が税務調査に入られたときに、古巣が手心を加えてくれるという“神話”が健在だからです。

なおかつ、税理士をチェンジ(交代)すると税務調査が入るという都市伝説もあり、多くの中小企業経営者はよっぽどの不満がないかぎりは税理士を変えません。だからこそ若手税理士は「じいちゃん税理士の茶坊主と化して、そのおこぼれにあずかるチャンスを狙うしかない」と言います。

かてて加えて、税理士はIT化により大打撃を食らいました。まず、ネットの普及により顧問料などの報酬が透明化され、それと同時に「格安」をうたう若手税理士が続々登場したこと。

また、あのグーグル出身者が開発した安価な“全自動会計”クラウドサービスが登場し、これまで税理士に高い手数料を払っていた記帳代行業務が、簡単なマウス操作だけで事足りるようになりました。これにより、「税務以外の業務、記帳代行と会計の部分は、あと5年はもたない」と嘆く税理士もいるほどです。

さらに、2016年には国民背番号制といわれる「マイナンバー制」が導入される予定です。すると、国民の給与や年金の源泉徴収票、支払い調書、はたまた健康保険や年金の納付記録まで、マイナンバーを打ち込むだけで管理できるようになる。そうなると、確定申告の負担は激減し、個人のお客さんは壊滅状態になると、多くの税理士は先行きを案じています。

もはやシャレにもならない、社労士の悲惨

独立・開業のしやすさ、労働者の味方という視点から、女性や若者に人気の資格、社会保険労務士(2010年の受験者は7万人を突破して過去最高を記録、累計取得者は約3万8000人だが。この10年で約1万人も増えている)は、弁護士、会計士、税理士とは比較にならないほど、状況はよくありません。

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