モノより思い出ではなく、モノ=思い出に

「コミュニケーション」が高めるモノの価値

 モノがあふれている社会で、売り手はいかにしてモノを売るか。そして、モノに囲まれている私たち買い手が、モノを買う理由とは何なのか。マザーハウス副社長の山崎大祐が、これからの時代の「モノの買い方、売り方」を考えていく。

 

「モノ>思い出」⇒「モノ<思い出」に?

モノより思い出。

ある車のCMで使われたキャッチコピーです。

モノにあふれた時代のモノが売れなくなってきている現実を的確にとらえた言葉といえます。第1回の連載でも紹介した「モノ消費からコト消費へ」なども、同じ背景から生まれた言葉です。この言葉だけとらえれば、「モノ>思い出」だったものが、「モノ<思い出」に変わってきているといえます。はたしてモノの価値は、思い出の価値を下回るものになってしまったのでしょうか?

そもそも、モノと思い出の関係は、大小の関係性で語られるべきものではありません。多くの場合、思い出にはモノが必要ですし、モノを大事に思うことでモノ自身にも思い出が宿るはずです。思い出とモノは対立関係ではなく、補完関係のはずなのです。

そして、この補完関係をつくるためにいちばん必要なのは、「コミュニケーション」です。しかし、この「コミュニケーション」を、モノが担うことを期待されている方は少ないでしょう。

今回は、モノを通じて作り出されるコミュニケーション、そしてそのコミュニケーションが作り出す「モノ=思い出」という関係性について見ていきたいと考えています。

引き出物の半分以上がカタログギフトという現実

モノが「コミュニケーション」を通じて思い出を作り出し、そして高める媒介となることは、私たちマザーハウスも強く意識していて、「コミュニケーション」を作り出すことに焦点を当てた商品もあります。

結婚式というのは人生に一度の晴れ舞台。そんな舞台で、ゲストの方に持って帰ってもらう唯一のモノが引き出物です。現在、結婚式の引き出物の中でいちばん選ばれているモノは、カタログギフトだということは皆さんご存じでしょうか?

その理由は掲載商品が多いこと、また幅広い年齢層をカバーしていることがあります。もちろん、それ自体悪いことではありません。モノにあふれた時代だからこそ、使わないモノを贈るよりも、実際に使ってもらうモノを選んでもらいたいという新郎新婦の気持ちの表れともいえます。ギフトカタログはその点では、「モノがあふれた時代のモノの買い方、売り方」の典型例なのです。

しかし、モノを贈るというのは、本来、自分の価値観を贈ることと同じはずです。先ほど挙げたような「選択肢が多いから」とか、「皆が選びやすいから」という理由だけで、カタログギフトが引き出物として決まってしまうのは、モノづくりをしている立場からすると、少し悲しくもあります。本来であれば、結婚式という人生の大事な1日だからこそ、贈るモノに思いを込めていただきたいですし、新郎新婦のおふたりにも自分の価値観を堂々と表現してほしい。モノを通して社会への価値を提供したいと思っているモノづくりの会社が感じている正直な気持ちです。

そこで、カタログギフトの利便性を生かしつつ、結婚式という思い出が強まるような「コミュニケーション」をリアルに行える仕組みを作れないかと考えた商品が、マザーハウスの「コミュニケーションギフトカタログ」です。 

パッケージもオリジナル。手のぬくもりを感じるカタチになっている
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