米国株は、4つに分けて考えよう マネックス証券・山岸大統氏に聞く(下)

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IT・ハイテクはアメリカ産業の代名詞

次にIT・ハイテクです。この分野は技術革新が早く、気を抜くと後発企業にあっという間にシェアを奪われて衰退してまう可能性が高いため、投資する際には注意が必要ですが、それだけ強い成長力が期待できます。しかも若い企業が多い。アメリカの企業に共通していえることですが、ドラスティックに経営戦略を変えていく、と言うスタンスが、とくにこの分野は明確だと感じます。

IT業界でよく比較されるのがアップルとグーグルです。日本ではiPhoneを中心にアップル製品の人気が高いようですが、スマホひとつとっても、世界規模でみればグーグルのアンドロイドのシェアが高く、足元では8割近くに達しています。

さらにグーグルは新しい技術をどんどん吸収すべく、ものすごい勢いでM&Aをしています。10の技術を吸収し、そのうち3コ使えればいいという感じでしょうか。検索エンジンから立ち上げたベンチャー企業が、今や「グーグル帝国」と言う形容が存在するほど、巨大な企業に成長しています。

一方、オンラインの書籍通販で企業したアマゾンも、めまぐるしい勢いで取扱商品の幅を広げると同時に、オンライン小売事業以外の領域にビジネスを拡張し、成長しています。たとえば電子書籍のキンドルはまさにITの活用。ほかにも、クラウドサーバサービス高い競争力をもつAWSも収益に貢献しており、同社もM&Aや新規ビジネスへの投資に余念がありません。安く早くあらゆる商品を顧客に、というサービス姿勢を鮮明にし、顧客満足度を上げています。

会員制サービスとして日本でも展開されているアマゾンプライムですが、アメリカ本国では79ドルと、日本の倍以上の料金設定でありながら、会員数がどんどん増えている。年会費は固定なので、顧客がどんどんアマゾンに商品を注文すると、配送コストがかさみ収益を圧迫します。

直近の四半期決算ではプライムの年会費について値上げの検討が明らかになりましたが、アマゾンプライムサービスが、あまりにも利用者の心を掴んでいるため、年会費を上げてもユーザーが大きく減ることはないだろうと見られています。同社の最大の特徴は、卓越した経営者であるジェフ・ベゾスCEOによる徹底した成長への投資姿勢です。

ITや物流ネットワーク、はたまた「ドローン」と呼ばれる無人ヘリ輸送機のように、一見するとビジネスに直結するイメージがもてない先端技術への投資。これらは、全て顧客サービスの追求を目的としていますが、マーケティングも非常に洗練されています。同社は収益を成長への投資に投じるため売上高に対して最終利益が小さすぎることで有名ですが、顧客サービスの追求がファンを増やし、ユーザーを獲得していく結果、成長を続けています。『アマゾンは発展途上にある』と投資家はとらえているのでしょう。

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