なぜ香川は、これほど苦戦しているのか? サラブレッド香川に足りないもの

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
拡大
縮小

ただし、どんなチームに入ったとしても、どんなに考えが合わない監督が来たとしても、信頼を勝ち取って結果を残すのが真に優秀なプレーヤーだ。

指揮官との考え方の違いを差し引いたとしても、なぜ香川はマンチェスター・ユナイテッドでここまで苦戦しているのだろう?

それを考えるには、まず選手としての「武器」をきちんととらえる必要がある。
香川の武器は、世界トップクラスの「敏捷性」と繊細な「ボールタッチ」だ。しなやかな体を生かして小刻みにステップを踏むことができ、スタンドから見るとひとりだけ早送りしているかのようだ。ボールを受ければ、細かくタッチしながら、くるっと反転して相手をかわしてしまう。

ボールを細かくタッチするメリットは、相手の出方に応じて、瞬時にボールをほかの方向に移動できることだ。ヴァンフォーレ甲府の城福浩監督は「サッカーで最も大事なのは、プレーをぎりぎりで変更できる能力」と語る。香川には、まさにその能力がある。

香川はサラブレッド

川崎フロンターレの風間八宏監督は、フジテレビの解説者時代、香川のよさをこう説明していた。

「香川は相手の届かないところに仕掛ける。そうすると相手は反応するしかない。香川はその反応をよく見て、相手の動きの逆を突くことができる。だから狭いところでも、相手につかまらないのです」

ボールを持っているときも、持っていないときも、香川の身のこなしは実になめらかだ。前に行こうとして相手がついてきたら、踏ん張ることなく柔らかいステップで方向転換することができる。代理人のトーマス・クロートが「シンジのような才能は、今後しばらく日本から出て来ないだろう」と絶賛するのもうなずける。

「動き分析」のプロのトレーナーから見ても、香川はサラブレッドだ。これまでプロ野球、Jリーグ、ゴルフなど、あらゆるスポーツに携わって来たトレーナーの西本直はこう分析する。

「香川選手のドリブルやターンの動きは、頭を動かさず、身体を振り子のように使っています。糸で頭を上に引っ張られて、それより下の部分が前後左右に自在に動くイメージです。こういう体の使い方をすると、どちらの方向にも素早く動くことができる。相手は対応しにくいですよね。どちらへでも切り返せて、いつでもシュートが打てるという体勢です」

次ページネイマールに通じる弱み
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT