「ごちクル」は宅配弁当のアマゾンになれるか 宅配弁当eコマースの雄、そのポテンシャルを探る

✎ 1〜 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 最新
拡大
縮小

1500円を超える高級弁当が高利益率の源泉?

共同商品開発や予約販売による成果報酬といった出店者メリットを提供し、飲食店が手掛ける余裕がなかった宅配も手掛けるビジネスモデルは、楽天のような通常のモール型コマース事業よりも利益率が高いと思われる。その盤石なビジネスモデルの上に、こだわりのコンテンツ編集力で売り上げを伸ばしていく。ビジネスモデル構築とマーケティング力の掛け算が競争優位性といえよう。

ごちクルでは主に3つの弁当の価格帯を設けている。

高級弁当(約50%):1500円以上

一般弁当(約25%):700~1500円

低価格弁当(約25%):700円以下

 (注)%はおおよその売上比率

一度の平均受注単価は2.5万円から3万円ほどであり、先ほどの役員会やイベントなどの需要と重ねると、高級弁当15個前後か、一般弁当や低価格弁当30個前後の受注と重なる。ごちクル側から各セグメントの粗利率は開示されなかったが、筆者が考えるに高級弁当の粗利率が高いと予測する。低価格弁当では100円の差を大きく感じるが、1500円の弁当と2000円の弁当の差はあまり気にしなくなってしまう心理はなかろうか。ここに利益率をグッと上げるスイートスポットがあるように思える。

今後は2日前の予約販売のみならず、前日注文を受けられる販売パートナーを増やしたり、個人向けの需要にも応えていきたいとごちクルは考えているようだ。Bentoは英語でも通じ、日本食人気とともに海外での人気も上昇中だ。近い将来の海外展開も見据えているであろう。

2012年6月期は取扱高が約7億円、2013年6月期には同約21億円と3倍の規模に。直近の月間提供弁当数20万食というごちクルは、どこまで取扱高と提供弁当数を伸ばしていくのか。コンテンツ事業などと比べて一般的に利益率が低いコマース事業の中でも、比較的利益率が高いであろうコマース銘柄として、2014年中の上場に期待がかかる。

【梅木雄平のスタートアップチェック(各項目を1~5で採点】
●経営陣:3.8 濱野亜紀さんに華がある
●市場性:3.7 弁当はある程度の市場規模があるが、ものすごい大きな市場ではない
●利益率:3.8 コマースの中では高いほうだが、あくまでコマース事業である
●競合優位性:3.8 物流も手掛けることで通常のモール事業よりも高い参入障壁を築く
●海外展開力:3.5 海外で日本食が人気とはいえ、日本国内ほどの市場は見込みにくい
●総合点:3.7 バーティカルコマースとしては利益率も高く市場も比較的多いのである程度の利益の伸びが見込めるが、時価総額1000億円規模のメガベンチャーになるには、ごちクル事業だけでは足りない。時価総額300億円くらいまでは手堅く見込める。
●予想EXIT:2014年中の上場
●上場時推定時価総額:150億~200億円

(撮影:谷川真紀子)

梅木 雄平 The Startup編集長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

うめきゆうへい

慶應義塾大学卒業後、サイバーエージェント子会社にてベンチャーキャピタル業務などに従事。複数のスタートアップ企業での事業経験を経て、2011年フリーランスとして独立後2013年に株式会社The Startupを設立。スタートアップ業界のオピニオンメディアThe Startup編集長を務める。著書に『グロースハック』がある
 

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT