中国のエリートは、靖国など問題にしていない

日中に必要なのは「着眼大局、着手小局」の発想

「東洋人の知恵を出し合って、日中関係を改善したい」。筆者の切なる願いだ(靖国神社、撮影:田所 千代美)

中村繁夫です。本年もどうぞよろしくお願いします。

昨年12月26日に安倍晋三首相が靖国神社を参拝した。日中の両国を中心に、欧米も含め、マスコミに大きく取り扱われている。この問題を、中国ビジネスに長年携わってきたビジネスマンの立場から論じてみたい。

ひとことでいえば、中国のエリートは、本気で靖国神社参拝を問題にはしていない。一般大衆は、「日本が戦時中のように軍国化する」というマスコミの情報宣伝が繰り返されたので、靖国参拝=軍国主義と信じているようだ。

しかし、多くの中国の知識人の本音をさぐれば、「所詮日本の政治家が、靖国神社に参拝することで、人気取りをしている」と思っているだけである。今や、多くの中国人旅行者や留学生が日本に来ている。彼らは日本が世界にも稀な平和国家であることをよく知っているし、本音を言えば日本は大好きな国なのだ。

中国が問題視するのは、安倍首相を警戒している証拠

過去を振り返ると、今まで首相の靖国神社参拝が大きく問題にされたのは中曽根首相と小泉首相の時である。1979年にA級戦犯の合祀が公になってから1985年7月までの6年余の間に、大平正芳、鈴木善幸首相らが何度も参拝をしていた。にもかかわらず、大きく問題視されたことはなかった。公的か私的かなどの論点はあるが、朝日新聞が中曽根首相の参拝を記事にするまでは、ほとんど誰も問題にしなかったのに、記事になった1985年8月以降、大きく問題視されるようになった。歴史を重んじる中国から見れば、おかしな現象である。

諸説あるが、当時の中曽根首相の政治力が、以前と比べ国際的にも影響力を持ったために騒がれた、というのも一つの実態なのだろう。小泉首相も同様で、その政治的影響力を極度に警戒したからとの見方も多い。そう言われてみれば、中国人が政治家として評価しているのは、最近では中曽根首相と小泉首相の二人だけである。実際、中国の世論によると、歴代の首相の中でなぜか、この二人が、結局は人気のある政治家ということになっているようだ。

逆に、二人以外の政治家は、あまり影響力もなく、中国や近隣諸国に「気兼ね」して、参拝を控えたために、中国側からは「安全パイ」扱いされ、軽視されていたのかもしれない。つまり、ある意味では、安倍首相は中国にとって実力者に映っているからこそ、大問題にしているという中国の知識人もいるぐらいである。このような中国的な独特の裏読みの感覚は、中国を理解する上では一般的である。

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