靖国参拝で露呈した、戦略なき安倍外交 なぜ中国の仕掛けた「古いワナ」に、自らはまるのか?

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安倍晋三首相が、政権発足から1年後の12月26日に靖国神社を参拝した。首相による参拝は2006年8月の小泉純一郎首相以来で、安倍首相としては首相就任後、初めての参拝だ。予定通りの行動なのだろうが、今後、さまざまな波紋が予想される。中国問題で屈指のジャーナリストである富坂 聰氏が、安倍首相の今回の参拝や、日中関係の今後などについて、鋭く分析する。
安倍政権はどこまで「冷徹な計算」をしたのか(AP/アフロ)

安倍首相が靖国神社を参拝した。「2014年正月の参拝説」などもあったが、首相は第一次安倍政権時代に参拝できなかったことを「痛恨の極み」としていた。7月の参議院選挙での大勝で基盤が固まった首相としては、「政権から1年での参拝」は、政治日程の中に事前に組み込まれていたはずだ。

脆弱な中国の政権に、世論を押さえられるか

安倍首相は、以前から参拝について「戦略性」を強調していた。問題はそれが「どの程度」のものなのかだ。参拝によって「予想されるリアクション」を全て考慮に入れて、本当に動いているのか。もし、そうでなかったとしたら、あまりに思慮がなく、非常に危険だ。

中国の習近平政権は、ポピュリズムの上に成り立っており、実は非常に脆弱だ。「小康状態」だった靖国の問題に再び火が付き世論が沸騰したら、それを押さえきれない。当然、政権としては、世論が沸騰する前に何らかの措置をとらざるをえなくなる。また当然のことながら、今回の参拝は軍関係者を中心に、「対日強行派」を勢いづかせてしまう根拠を与える。「やはり日本は話ができるような相手ではない」という論理がまかりとおる危険性が増す。

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