200回以上中国に渡航し、同国を「主戦場」としているビジネスマンとして、「中国のトイレはなぜ汚いのか」など、最近は中国関連のコラムを中心に書いてきた。今回は、中国との付き合いから逆に考えたことだが、新年からの両国関係の違和感もあり、「日本人はなぜ交渉力が弱いのか」「なぜ誤解されやすいのか?」について触れてみたい。
中国人の「ビジネス」に対する考え方とは?
私の独断的な考えかもしれないが、日本人は思い込みが激しく発想が一面的で、必ずしも子どもの時からディベート(討論)のテクニックを鍛えられていない。そうしたこともあり、戦略的な思考が十分にできていないことが少なくない。
中国人と渡り合い、世界に通用する交渉力を身に着けるには、自分がどうかという「主観的観念」だけではなく、まず客観的事実を分析する視点が大切だ。最近の日本と中国の関係の悪化を見るにつけても、両国の価値観の違いに、その原因の一つがあるような気がする。
例えば、商人は一般的には卑しい職業とされている国も、少なくない。昔の日本人は「士農工商」で、商を農や工の下に位置づけたが、この理由の一つは、生産をするかどうかということが少なくとも建前だったと思う。だが、中国人はそうは考えない人が大半だ。善しあしは別にして、何も生産せず、極端なことを言えば「口先三寸」だけで儲けることを恥ずかしいとは思っていない民族だというのが、私の理解である。
もし相手を騙したり、誤魔化したりしても、相手が馬鹿だから仕方ないと思っている人も少なくない。「駄目で元々」と考えて、厚顔無恥も甚だしい要求を平気で繰り返すような極端な交渉には閉口するが、逆に、「そこまで言うには余程の裏事情があるのだろう」と忖度してしまいがちなのが、日本的な配慮文化だと、私は考える。
中国人ビジネスマンにとっては、多くの交渉は「ゲーム感覚」でなされることも少なくない。だから、クソ真面目な日本人にとっては、不信感の塊となってしまう。「法律は守らなければならない」と考える日本人に対して、「法律も人間が決めたものだから、朝令暮改しても当たり前だ」と発想する中国人と議論しても、うまく行くはずはない。まずは、こうした法律感覚の差から埋めない限り、協力関係は成立しにくいのである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら