僕が市川海老蔵さんと交わした「悪魔の契約」

『利休にたずねよ』森田大児プロデューサーに聞く

 その鋭い美意識や独創性により、織田信長や豊臣秀吉さえも一目置いたといわれる“茶聖”千利休。しかし、そんな崇高なまでに研ぎ澄まされた彼の美意識の原点にあるものが、彼の若き日の秘められた情熱的な恋にあるとしたら――。そんな大胆な仮説をもとに稀代の茶人の出発点をとりあげ、第140回直木賞を受賞した山本兼一の歴史小説を映画化した『利休にたずねよ』が12月7日より公開されている。
 本作には、主演の市川海老蔵を筆頭に、中谷美紀、市川團十郎、伊勢谷友介、大森南朋など豪華役者陣が参加。撮影は2012年11月に東映京都撮影所で開始。スタジオセットのほか、三井寺、大徳寺、神護寺、南禅寺、彦根城といった国宝級の建造物でのロケーションも敢行された。また、撮影にあたっては、利休が実際に使用した「長次郎作 黒樂茶碗 銘 万代屋黒 利休所持 万代屋宗安伝来」をはじめとする茶の名器を数多く手配。さらに千利休より受け継がれる茶道の名門・三千家の協力を得て、幻の「利休の所作」を再現した。その本物による映像美が評価され、本作は第37回モントリオール世界映画祭で「最優秀芸術貢献賞」を受賞している。
 その“本物”の黒樂茶碗を劇中に登場させるべく奔走したのが、当時、東映の関西支社の宣伝マンから映画化を実現させた森田大児プロデューサー。市川海老蔵に日々、ハッパをかけられながら、撮影シーン直前まで京都中を駆けずり回っていたという。そんな彼の若き情熱が、本作に“本物”の迫力をもたらした。森田プロデューサーに、時価総額数億円は下らないと言われる黒樂茶碗を、実際に用意するまでの苦労について聞いた。

 ――東映の岡田裕介社長は本作をプロデュースをするにあたり、何かおっしゃっていたのでしょうか?

クランクインの直前に社長から励ましの言葉をいただきました。そのときは急に社長室に呼ばれたので、クビなのかなと思い焦りました。でも実際はとても機嫌がよかったのです。なぜかと言いますと、細川護熙(ほそかわもりひろ)先生のお茶碗を劇中で使うことが決まったからなのです。そして細川護熙先生は社長と交流がある方なので、それで社長の耳に入り、「お前みたいな素人のプロデューサーが、今、現場にいても誰も言うことは聞いてくれないだろう。だけどこうやって本物のお茶碗を持ち込むことで現場にやる気や緊張感を与えることなら、今のお前でもできる。だからこれはなかなかいいことをした」という風に言ってくださったのです。そういう激励はうれしかったですね。

――本物のお茶碗と言えば、時価数億円はくだらないと言われる初代長次郎の黒樂茶碗「万代屋黒」を用意するのに、非常に大変な思いをされたそうですが。

撮影の初日に、市川海老蔵さんが僕に「この映画では本物を使わないの?」といったことをおっしゃるんです。海老蔵さんの言う本物というのは、もちろん利休が使った物という意味です。とはいえ、今焼と言ったら当時でいう最新のお茶碗でしたので、「今ここに古いものを持ち込むとそれはウソになってしまいます」というような言い訳は、一応、用意していました。しかし海老蔵さんは、お茶に関する勉強している僕をそれなりには信頼してくださっていたとは思うのですが、「よく勉強してるね、ただそれは本音ではないでしょ。だってあの400年の歴史を背負ったお茶碗の迫力に勝てると思う?」とおっしゃった。

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