50代なら「太ってなくても糖質制限」の理由 医師が教える「病気と老化を予防する」食事

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このように、50代から糖質制限を始めれば、早いうちに老化を止められるのです。

なお老化の元凶のもう1つは、前述のように過剰な活性酸素による酸化ストレスです。こちらも糖質制限食で高血糖と高インスリン血症を防げば、活性酸素の発生が減るのである程度予防できます。

50代こそ糖質制限を始めるべき

私の経験上、糖質制限を始めるのに重要なのは50代です。50代ならば、まだ、老化物質であるAGEsは取り返しのつかないほどにはたまっていませんから、糖質制限でこれ以上の蓄積を食い止められるからです。50代ならまだ、間に合うのです。

しかし、これよりも高齢になると、かなりの量のAGEsがたまっており、老化が身体を蝕(むしば)んでしまっています。そして、いったんたまったAGEsはもう消えません。

つまり、50代で老化物質の蓄積を止められるかどうかで、その後の人生が決まると言っても過言ではないのです。50代こそ糖質制限を始めるべき時期なのです。

しかし、残念ながら、多くの中高年が糖質制限にあまり熱心でないのが現状です。

その理由はいくつかあるようです。

まず、特に男性に多いのですが、仕事が忙しすぎるという人がいます。たしかに、50代というと社会的な責任の重い世代ですから、健康を疎(おろそ)かにしがちになるのも無理からぬところがあるでしょう。

また、糖質制限に懐疑的な人もいます。これは女性にも多いのですが、健康情報に詳しいというタイプに多いようです。情報過多の現代では、糖質制限に関する誤解が蔓延していて(エビデンスなき「糖質制限」論争は意味がない)、その有効性を正しく認識していない場合もあるのです。

そして、最も多いのは、もう健康になることをあきらめているという人です。何度かダイエットに挑戦しては挫折を繰り返し、中年太りは仕方がないと思い込んでいる人のことです。そんな人は、年を取れば歯が抜けたり視力が落ちたりなどといった衰えが起こることも、仕方がないとあきらめています。高齢になれば老化するのは常識でしょうし、これは50代のほぼ全員かもしれません。

しかし、あきらめているのは、糖質制限のアンチエイジング効果を知らないからであり、いかにももったいない話だと思われてなりません。

50代は、人生の後半を幸せなものにできるかどうかの分岐点です。糖質制限の道へと進むことを決断していただきたいと願っています。

江部 康二 高雄病院理事長

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えべ こうじ / Koji Ebe

内科医、漢方医。高雄病院理事長、日本糖質制限医療推進協会理事長、江部診療所所長。1950年生まれ。1974年京都大学医学部卒業。1978年から高雄病院に勤務。漢方療法、絶食療法、食養生、心理療法なども取り入れ、独自の臨床活動を行ってきた。1999年高雄病院に糖質制限食を導入し、2001年から本格的に取り組む。2002年に自らも糖尿病であると気づいて以来、さらに研究に力を注ぎ、「糖質制限食」の体系を確立。自身の糖尿病も克服する。

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