ハーバード生が直面する「あなたは誰?」問題 「資本主義の士官学校」が教える真実

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そこにアレックスが参戦する。

「このリンゴジュースを飲むのは子供であり、なによりも安全性が求められる。生産者と消費者に圧倒的な情報不均衡がある中で、100%の安全性を確認できないリンゴジュースを出荷するのは断固反対だ」

HBSの学生は、情報が不完全であり、時間も限られている中、ギリギリまで考えたうえで決断し、それを主張することをクラスの中で練習する。これを毎日繰り返していくことによって、情報の分析方法、決断する勇気、意見の主張の仕方などを身に付けていく。

あなたはどんな人間なのか?

HBSのクラスルームで、自分の立場を主張すると「なぜそう思うのか?」と、必ず問われる。そこでは、自身の結論に至った分析の経緯や論理だけでなく、自分自身の性格や思考回路について理解しているかどうかが問われている。

たとえば、アントレプレナーシップ(起業家精神)の授業。

優秀なエンジニアが1年ほどかけて開発した新技術を、ある企業が200万ドルで買収を提案してきたというケースを扱った。

クラスメートの意見は、売却すべきかどうかで割れた。一部の人は、今後、値上がりする可能性が高い根拠をこれでもかと示し、売却するのは技術を完成させてからのほうが得策と主張した。それに対し、業界は日々変化しており、さらに画期的な技術が急に開発される可能性もあるため、それならば確実な200万ドルを今手にしたほうがよい、と主張する人もいた。

同じケースを読み、同じデータを与えられても、その解釈は十人十色だ。それは、人によってリスクの許容度や、キャリアへの考え方、また、おカネへの執着心が異なるからだ。「なぜそう思うのか?」と聞かれることで、自分の主張の基盤となっている性格や、思考回路について理解していく。

「あなたは、何を大切に想い、何を恐れるのか? あなたの考えの根底にあるものは何か?」

これらを愚直なまでに突き詰めることで、自分という人間を理解する。HBSのクラスルームでは、幅広い業界のさまざまな経営課題について議論しながら、同時に自分自身の内面を細かく検証していたりする。

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