医学部入試の面接で本当に起きた「逆転合格」 これが最新情報で判明した面接の突破法だ

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ふさわしい答えというのは、受験している企業の特性などによって変則的で、画一的なものとはならないだろうが、当時、指導をしていた大学生はこんな答えをしたという。

その学生は私の目の前で、この問題で対立している構図として、サラサラと表のようなものを完成させて筆者に見せ、説明し始めた。質問を受けた際、頭の中でポイントを組み立てて、答えたのだという。見ると、「出社する場合の+-比較表」と書かれ、以下のようにまとめられていた。

(+面)

①本来は休日予定の日に出社すれば、新人として、上司の期待に応えることができる。

②上司の困窮を救うことは部下の務めであり、ひとまず会社の利益になる。

③臨時の仕事が夕方までの仕事であれば、夜はデートの時間もとれるはずだ。

(−面)

①新人ということで長い間、土曜日は休めてなく、明日も出社するとなると、体が疲弊してしまう。

②1カ月前から彼女とデートの約束をしており、その約束をほごにすることは、彼女との人間関係の観点から望ましいことではない。

サラサラと書いた表を、筆者に見せながら、彼は続けた。実際の面接試験では、前提として、①まず、この仕事が私以外に代替がきかないものなのか、代替可能性とその重要度をはかり、②交際している彼女が自分にとって、かけがえのない人かどうかなどを勘案し、③総合的に判断する必要があることを述べました、と返事した。結論として、「答えは一元的には決まりません」、と結んだという。

条件を分析し、複雑化して答える

彼女の価値について言及している点は、何とも失礼な話だが、その最終面接では社長をはじめ、役員は大笑いし、彼は内定した、という。

何気ない回答だが、ここに面接の本質が現れている。私は面接指導の際に、よく単純化して答えるのはダメだよ、と指導している。与えられた質問をよく精査し、可能ならば複雑化しなければならない、と。条件分析の重要性である。ただし、時と場合によって、くどいのはダメだよ、と。

冒頭に述べたように、本問は、実は医学部入試と何ら関連性がないわけではない。前回の記事「『別れの手紙』を書かせるとわかる医師の資質」でも述べたように、私が主張している、医師の能力や資質のうちの「利益衡量能力」(複数の価値が対立している場合にそれぞれの利益を調整してより良い結論を導く能力)が、問われているからである。利益衡量する態度はまさに複雑化そのものだ。

2018年の医学部入試でも、利益衡量能力が問われる場面は多々あった。その一例を紹介すると、東京慈恵会医科大学のMMI(MULTIPLE MINI INTERVIEW)で問われた、次のような問題がある。

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