だが、ちょっと待ってほしい、その病気になる直前の”病気もどき”こそ体のSOS信号なのだ。この連載では看過することのできない”病気もどき”について医療ジャーナリストの安達純子氏が解説する。
『飲み過ぎは逆効果? サプリメント依存症の危険』もあわせてご覧ください
サプリ漬けの生活
前回、サプリに効能効果を求めるならば医薬品の選択、一部の効能を求めるならば特定保健用食品の活用について紹介した。しかし、もともとサプリは食品ゆえに、すでに「サプリだけの生活」を実践している人もいる。手の平に山ほどサプリを乗せて、1日3回ゴクリ。必要な栄養素だけを取ることができ、高カロリーな食事とは無縁のために、スリムな体型を維持できる。しかも、老化に逆らうようなサプリを活用すれば、いくつになっても若さを保つことも可能かもしれない。
サプリは手軽に飲めるし、食事の時間を仕事や趣味への時間として振り分けることもできる。体型の維持や必要な栄養素を効率的に摂取できる「サプリだけの生活」は、まさにいいこと尽くめのようだが、実際はどうなのだろうか。
体内の老化度などを詳細に調べる「抗加齢ドック」を運営する東海大学医学部付属東京病院の西﨑泰弘副院長が指摘する。
「病気などで食事が取れない方が、点滴だけで生命を維持できるように、人間の体は、たとえば、タンパク質、脂質、炭水化物を飲料で取り、ビタミン、ミネラルなどをサプリメントで取って、必須の栄養素がすべて補えてしまえば、それだけで日常生活は維持できます。ただし、それはおススメしません。
その理由のひとつは、食事を取らないことでの咀嚼(そしゃく)力低下への懸念です。咀嚼は、食べ物を単にかみ砕くだけでなく、唾液を分泌して口の中を洗浄し、消化液の分泌や脳への刺激など、さまざまな役割を持っています。単にサプリを飲み込むような生活を続けていると、長い目で見て、咀嚼力の低下に伴う弊害に結び付く可能性があるのです。さらに、サプリだけの生活による偏った栄養素の過剰摂取や、腸を使わないことによる免疫力の低下も問題となります」
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