JR三江線に続く「廃線危機」の路線はどこだ? 10年前のデータが予言していた過酷な現実

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広島の都市圏では利用者の多い芸備線も備後落合駅付近では客はまばら(記者撮影)

とりわけ利用者が少ないのは、芸備線・東城―備後落合間。平均通過人員はわずか9人だ。芸備線は備中神代―広島間の159 kmを結んでいる。広島―狩留家間は広島都市圏ということもあり平均通過人員が9306人と非常に多く、これが芸備線全体の平均通過人員を押し上げているが、広島から離れるにつれ利用者数は落ち込んでいく。芸備線の他の区間の平均通過人員を見ても、備中神代―東城間が81人、備後落合―三次間が225人と非常に少ない。

九州では日田彦山線・田川後藤寺―夜明間の平均通過人員が299人と低迷している。2017年7月の九州北部豪雨で久大本線と日田彦山線が甚大な被害を受けた。久大本線は急ピッチで復旧工事が進むが、日田彦山線の添田―夜明間は運休したままだ。最近になってようやくJR九州(九州旅客鉄道)と県、沿線自治体との間で復旧に向けた話し合いが始まったが、JR九州が久大本線のようにすぐに復旧工事に踏み切りはしなかったのは、多額の工事費用が見込まれる割には利用者が少ないからという側面もあるのだろう。

廃止決定後ではなく、決定前に乗るべき

三江線の廃止決定が報じられると、多くのファンが詰めかけ、普段は1両だけで走る列車を3両編成に増やしても超満員という日もざらだった。三江線に限らず、2016年の留萌線・留萌―増毛間をはじめ、廃線と伝えられた途端に全国からファンが押し寄せる。いわゆる“廃線フィーバー”だ。乗客が少ないから廃止されるのに、現地では超満員の列車が走っているのでは釈然としない人も少なくないだろう。

留萌線増毛駅。現在、ここまで列車がやってくることはない。写真は留萌ー増毛間の廃線前に撮影(筆者撮影)

ファン心理としては廃線になる前に乗りたいのだろうが、廃線が決まった以上、いくらたくさんの客が乗っても廃線が覆ることはない。だとしたら、廃線の危機にある路線に先回りして乗車すれば、普段とは異なる混雑ぶりに煩わされることもない。むしろ、多くのファンが乗車することで鉄路存続への一助となるかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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