28歳、暴力夫から逃げた「一児の母」の間一髪 保護施設シェルターに命を救われた

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――どうしてそんなことになってしまったのか。

夫とは、高野さんがOLと掛け持ちで勤務していた大阪のキャバクラで知り合った。知人に連れられて来た彼は、夜の店にはほとんど来ないまじめなタイプ。紳士的な雰囲気に惹かれて、交際がスタート。半年でプロポーズを受け、24歳で結婚した。すべては順調のように見えた。

「夫は銀行員で、結婚後すぐに転勤が決まり、大阪から東京に引っ越しをしました。誰も知り合いのいない土地に行くのは不安でしたが頑張ろうと思っていました。

実は、東京に越した頃から、私の家事のやり方が気に入らないと、夫の指摘が多くなってきたんです。でも、夫は元々几帳面な人。私も独身時代は適当に家事をやっていたので、当時は『普通はここまできちんとやるんだ』と感心しながらこなしていました」

しかし夫の指示はさらにエスカレートしていく。

「『食器洗いスポンジが汚れるのは不快だから、食器は水のみで汚れを全部落としてから、洗剤とスポンジで二度洗いしろ』『洗ったコップはそのままふせたらにおいがこもるから全部吹きあげろ』など。炊事、掃除、洗濯、すべての家事について細かい注文をしてきたので、それをこなすのに日々必死でした」

そのうちに家事は完璧にこなさないと罵倒されるようになる。もし、少しでも夫の基準から外れていた場合は人格を全否定されるようになった。

「『お前は本当に価値がない人間だ』『死ね』『今すぐここから飛び降りろよ』と言われ続けました。そう言われ続けると、自分は本当に生きる価値のない人間だと思えてしまって。すごく落ち込みました。また出会った当初が夜の店だったので『キャバクラで働いていた女のクセに』と蔑むような言い方もよくされました」

「さらに、母が家に遊びに来たとき、その所作が気に入らなかったみたいで。『あんな親から生まれたお前は最悪だ』のような言い方もされましたね」

狭い空間で繰り返される言葉の暴力は、高野さんを洗脳した。夫が悪いのではなく、できない自分が全部悪い。そう信じて疑わなかった。

出産後は関係が良くなるかもと思ったが…

そんな中、ある日妊娠が発覚。夫は妊娠中、気遣いの言葉をかけてくれることがあったという。

「つわりだった私を気遣って家事を助けてくれたこともあったんです。出産後は関係が良くなるかもしれないと。すごく期待しました」

しかし、そんな期待はあっさりと裏切られる。ウツ病で会社を休みがちになった夫は、出産後はほとんど会社に行かなくなり、さらに暴力をふるうようになった。

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