佐川氏喚問は「森友全容解明」につながるのか 自民党は動揺、問われる野党の「喚問力」

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一方、22日の自民党各派閥の定例会合では、安倍政権の緊張感欠如を指摘する声が相次いだ。額賀派の額賀福志郎会長は「行政や政治に対する信頼が損なわれており、来年の統一地方選や参院選などにも響く」と危機意識を露わにし、岸田派の会合では安倍昭恵首相夫人に「慎重な行動」を求める声が出た。

また、和田政宗参院議員が参院予算委員会の集中審議で太田充理財局長に「安倍政権をおとしめるため、意図的に変な答弁をしているのでないか」(後に議事録から削除)と述べたことについては、二階派の伊吹文明元衆院議長が「非常に傲慢。国会議員になれば何でもできると思っているのが支持率急落の原因だ」と指弾。さらに石破派の石破茂元幹事長は、文部科学省が名古屋市教育委員会に前川喜平前事務次官の授業内容を報告するよう求めていた問題に言及し、「あってはならない対応」と厳しく批判した。

自民党各派は22日夜の事務総長会議で「党内で足の引っ張り合いなどしないで、今は一致結束して安倍政権を支える」ことを確認したが、証人喚問を前に、党内のざわめきと動揺は収まりそうもない。

これに対し、野党側は「政権打倒のチャンス到来」(立憲民主党)と勢いづく。立憲民主党の枝野幸男代表は「証人喚問は入り口にすぎない。権力の私物化が明らかになっており、本質的な原因にたどり着くよう努めたい」と語り、共産党の志位和夫委員長は「(佐川氏は)改ざんが誰の指示で、どういう目的でやられたか、真実を語っていただきたい」と強調した。政界では佐川氏の「証言拒否」がささやかれるだけに、野党側からは「佐川さん、頑張れ」(辻元清美立憲民主党国対委員長)などと佐川氏の"全面自供"に期待する声も相次ぐ。

野党6党は事前の「籠池氏接見」で準備

そこで問われるのが野党の喚問戦略だ。これまでの森友問題での国会審議では、立憲民主、希望、民進の3党の主導権争いが目立ち、予算委などでの疑惑追及も「尻切れトンボ」になりがちだった。このため、今回は政権寄りの日本維新の会を除く野党6党が事前調整して「6党一体となっての喚問」(立憲民主党)を目指している。

ただ、与党喚問で佐川氏が「理財局の判断で公文書書き換えを指示した」などと政権側のシナリオに沿った証言をした場合、野党側がそれを覆す喚問ができるかどうかがポイントだ。政権への打撃を避けたい与党は、秘密裏に財務省側と綿密な打ち合わせして喚問に臨むとみられており、野党が成果をあげるためには「政府与党内調整」と「刑事訴追のおそれ」という2つの大きな壁を乗り越える必要がある。

野党側がその有力な材料と位置付けるのが「籠池氏の言葉」だ。立憲民主など野党6党は勾留中の籠池氏との面会を大阪地裁に申請して認められたため、23日午後に立憲民主、希望、共産各党の代表者3氏が大阪拘置所で45分間、接見した。

代表者3氏によると、籠池氏は決裁文書から削除された昭恵夫人の「いい土地ですから、前に進めてください」との発言について「確かにそういうふうにおっしゃっていた。間違いない」と語った。また、国有地に関する交渉については、昭恵夫人や夫人付き職員に「こういう状況になっています」などと逐一報告していたと説明した。さらに財務省による文書改ざんについては「まったく知らない。びっくりした」と述べた。

これを踏まえ、週明けの26日も民進、自由、社民各党の代表者3氏が同様の接見に臨む。6党は一連の接見内容をすり合わせた上で、具体的な「籠池氏の言葉」として佐川氏に突き付け、同氏の国会答弁や証言内容との食い違いなどを浮き彫りにする戦略だ。

籠池氏は昨年7月末に詐欺容疑で逮捕されて以降、弁護人以外とは面会できない状態が続いてきたため、今回の野党の接見は弁護士以外で初めてとなる。各党は「籠池氏の主張を真摯(しんし)に受け止めて分析し、証人喚問につなげていきたい」(希望の党)などとしている。与党側は「詐欺師が何を言っても客観的に信用されるはずがない」(自民国対)とけん制するが、「新事実でも暴露されれば、佐川氏の証言にも影響が出る」(同)と不安も隠さない。

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