子どもの学力と体力の知られざる深い関係 最新の脳科学でわかった運動の重要性

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さらにアメリカの研究チームも、小学校3年生と5年生、合わせて250人規模の調査を行って同様の結果を得ています。

科学者たちが生徒の体力を正確に把握するため、心肺機能・筋力・敏捷性を計測したところ、体力のある生徒たちは算数と読解のテストにおいて高得点でした。しかも、体力的に優れていればいるほど、得点も高いという結果を得ることができました。

驚いたことに、肥満ぎみの生徒たちは別の兆候を示しました。体重が重ければ重いほど、試験の得点も低い傾向があったのです。

アメリカ・ネブラスカ州でも1万人を対象にして同様の調査が行われ、体力的に優れた子どもは、そうでない子どもより算数や英語の試験で得点が高いことが判明しました。

試験内容が難しくなるにつれ、体力的に優れた子どもとそうでない子どもの点数の差は開き、体力のある子どもが大差で上回ったとのことです。

「最少4分で学習効率が上がる」という前代未聞の報告

なぜ「体育の時間」が子どもの学力向上を強力に後押ししたのか――その理由は「海馬の成長」にあると考えられています。

記憶中枢として脳に鎮座する海馬は運動によって刺激を受けると成長することが確認されていて、10歳児の脳をMRIでスキャンした結果、体力のある子どもは実際に海馬が大きいことが判明しました。

さらに、身体を動かした直後、物事に集中できる時間が長くなることも立証されており、記憶力と集中力の向上、この2つの効果によってより多くの学習内容を脳に定着させられたのだと考えられています。

では、集中力と記憶力が高い状態を維持するには、最低どれくらい運動をすればいいのでしょうか?

それを探る調査が数々行われていて、9歳児が20分運動すると、1回の活動で読解力が格段に上がる、というデータがあります。

また別の実験では、10代の子どもたちが12分ジョギングしただけで、集中力が高い状態が1時間近く続き、読解力が向上しました。

それだけではありません。たった4分の運動を一度するだけでも集中力が改善され、10歳の子どもが気を散らすことなく物事に取り組めることも立証されたのです。

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