仕事ができない人は一流を手本にできてない 正しい「型」を身につけなければ成果は出ない

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平昌オリンピックの羽生結弦選手も、大会直前までトレーニングを積めない時期がありましたが、それまでの鍛錬のおかげで、大会ではいつもどおり、あるいはそれ以上のパフォーマンスを発揮することができました。つまり、「型」を徹底的に反復することは、どんな状況下でも成果を発揮できることにつながるのです。

仕事で一流の「型」を真似するのは正解か?

拙著『どんな会社でも結果を出せる! 最強の「仕事の型」』でも詳しく解説していますが、仕事においても、一流の「型」というものは存在します。故スティーブ・ジョブズ氏は、プレゼンテーションに臨む前に何度もリハーサルを繰り返し、自身の細かい動きも含めてチェックしていたといいます。

ジョブズ氏などはなかなか真似できないとしても、職場の先輩など、優れた人の「型」をそのまま真似することは、生産性の向上につながるのでしょうか?

われわれの身近な仕事のシーンでも、書籍やメディアなどで一流ビジネスパーソンの思考法や行動、勉強法などがよく紹介されます。こうした一流の方々の「型」を真似ることは、非常に有用なこともある一方で、かえって生産性を落としてしまったりする場合もあります。

たとえば、新人営業マンが部の先輩であるトップ営業マンの資料づくりをそのまま真似すると、失敗してしまうことがあります。というのも、特に部署でもトップの成績を挙げるような人は、社会人経験を通じて得てきた知識や論理性、プレゼンの場数などから、多くのことを口頭で相手にわかりやすく説明できるため、資料には「必要最小限」の情報しか書いていないことも多くあるからです。

先輩にとっては、そうしたほうが、より多くのお客様に会えたり、分析に時間がかけられたりと、業績を最大化できる可能性が高くなります。ただ、この資料づくりの部分だけを新入社員が真似すると、必要な情報が相手に十分に伝わらず、そのためにプレゼンが通らなかったりする可能性が出てきます。

たとえば、多くのコンサルティング会社では、資料のつくり方における「型」があります。各社によって、言い方や教え方は異なると思いますが、私が所属していた野村総合研究所では、「玉座」という資料づくりの「型」がありました。

資料のいちばん上の行に、そのページで言いたいことを簡潔に書き表したものを、「玉座」と呼んでいました。私自身も「玉座」を書くことを通じて、「何を伝えたいのか、ひと言でわからなければ、その瞬間に資料は死ぬ」ということを徹底的に学びました。言い換えると、言いたいことがまとまらないものは、相手も理解できないので、「玉座」が書けないということは、理解促進のツールであるはずの「資料」がその役割を果たしていないということを表します。

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